第9章 火が灯るその日まで
この小刀を戦いで使った事は今までに一度もない。けれど鉄穴森さんのご厚意に甘えて、自分の日輪刀を研いでもらう時に一緒に具合を見てもらっていた。だから使えないわけではないはず。
うぅん。やらなきゃいけない。
ふぅっと一度息を吐く。
集中しろ。
シィィィィイ。
「‥その呼吸は‥伍ノ型か?」
杏寿郎さんに問われ、肯定を示す為に一度頷く。私の1番得意な型で、恐らく今の状況に最も適しているはず。
「いや、その短刀で伍ノ型を撃っても避けられる可能性が高い。玖ノ型だ。玖ノ型を使え」
その言葉に私は伍ノ型を取りやめ、再び顔だけ杏寿郎さんへと向ける。
「‥確かに玖ノ型の方が‥良いです。でも‥私は玖ノ型を‥打てた事がありません‥」
槇寿郎様からやり方を教わった。でも、どんなに頑張っても上手く出来なくて、炎の呼吸の奥義と言われるようなレベルに達した事は一度もなかった。やはり"煉獄"の名を持たない私では無理なのだろうか、と悩む私に「またバカな事を考えているな」と槇寿郎様に睨まれたのは記憶に新しい。
「大丈夫だ。ナオの頑張りは知っている。君に足りないのは自信だけ。心を燃やせ。‥俺が側にいる」
杏寿郎さんが意志の強い瞳で、私をじっと見つめる。何でだろう。杏寿郎さんが側にいてくれるだけで、何でも出来てしまうような気がする。
「‥はい‥っ」
きっと。出来る。あんなに不安だったのに、今は確かにそう感じた。
「うむ。‥俺と呼吸を合わせるんだ」
「はい!」
シィィィィイ。
心を燃やせ。
私には
杏寿郎さんが、
千寿郎さんが、
槇寿郎様がついてる。
私の手の上に杏寿郎さんの手が添えられる。
出来る。絶対に。やるんだ!
身体が今まで感じた事がないほど熱くなり、私の手の甲に炎の模様が出現する。
炭治郎くんの身体がガクリと崩れ、すかさず善逸くんが斬りかかる。
今だ。
「炎の呼吸奥義、玖ノ型煉獄っ!!!!」
ッドォン!
「‥ッガ」
残りの命全てをかけて放った玖ノ型は無惨を捕らえ、無惨は苦しそうな呻き声をあげる。
しかしかなりのダメージを負わせたもののその首を捉える事は出来ず、すかさず飛んできた腕の攻撃をまともに喰らってしまい私の身体は吹っ飛ばされた。
「‥ナオさんっ!!!!」
炭治郎くんの叫び声が聞こえた。