第9章 火が灯るその日まで
「っ本当!?それ、どこにある!?」
私の慌て様に千寿郎さんは驚き一歩後ずさる。
「お部屋に、運ばせてもらいました。座卓に置いてあります」
「わかった!ありがとう」
千寿郎さんにお礼を告げ、私はバタバタと音を立て部屋へと急いだ。
「‥あった」
杏寿郎さんと私の2人で使っていた部屋の、主に私が使う座卓にそれは置いてあった。
見廻りで持って出かけた荷物を降ろす時間ももったいなくて、私は荷物もそのままに小走りにその座卓に向かう。
震える手で麻紐で厳重に縛られたその箱を開け、中にあったものを取り出す。チャキリと鞘から抜くと
「‥杏寿郎さん‥っ」
それはあの時上弦ノ参が投げ捨てた、杏寿郎さんの日輪刀の刀身をそのまま使った小刀。柄をつけた事で、若干短くなったようにも見えるが正真正銘杏寿郎さんが使っていた刀だ。鬼と戦う時に使用するのには短すぎるが、元より戦いで使うつもりはなかったので十分だった。
箱と一緒に置かれていた文を開けると、やはりそれはこの刀を作ってくれた鉄穴森さんからのものだった。
その文には私を気遣う言葉と、もし何か問題があったり調整の必要があれば、遠慮せずに言ってほしいということが書かれていた。
私はその小刀を懐へとしまった。
杏寿郎さんの羽織に包まれ、杏寿郎さんの日輪刀を身につけているとまるで杏寿郎さんが側で守っていてくれているように思えた。
私はすぐさま感謝の文をしたため、相棒に刀鍛冶の里へと持って行ってもらった。
鉄穴森さん‥ありがとうございます。
私はその日から、いついかなる時も、寝ている時でさえ、その小刀を懐にしまい持ち歩いた。
杏寿郎さん。
私、頑張るから。
必ずやり遂げてみせるから。
寂しくて辛くなった時は、その刀を胸に抱き杏寿郎さんの事を思うと、また前を向いて頑張ろうと思えた。
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「ナオ!起きろ!」
杏寿郎さんの‥声が聞こえる。
「‥っナオ、頼む!起きてくれ‥っ」
迎えに来てくれたのかな?それにしては身体中が焼けるように痛む。
重たい瞼を開けると、現実と幻の境目にいるようなそんな不思議な世界にいた。やはり私はもう死んでしまったんだろうか、とぼんやり考えていると
「ナオ!」
突然の目の前に会いたくて会いたくてたまらなかった愛しい人の姿が。