第9章 火が灯るその日まで
急にこんなお願いをして迷惑以外の何でもないことはわかっていた。きっと任務で忙しい後藤さんを困らせてしまう。それでも、どうしても私が前に進む為にそれが必要だった。
‥こんな急なお願い、断られても仕方ないよな。
そう思っていたのに
「良いですよ。俺はまだ任務があるから行けないですが、手の空いている人間を探してなるべく早く持っていきます」
と、さも何でもないことのように答える物だから私はポカンとしてしまう。
「‥え‥?良いんですか?」
「はい。‥そこまで急がない方が良いですか?」
「いいえ‥っ!私は‥嬉しいのですが‥本当に良いんですか?」
「はい。‥柏木さんのお願いであれば、隠の連中は全員喜んで力を貸します」
後藤さんのその言葉に、私の頭は疑問符でいっぱいだった。
「‥炎柱様と柏木さんに助けられた隠は数えきれない程います。それにみんな、あなた方2人を長い事見守ってきた。だから‥どんな些細な事でも、柏木さんの助けになれることは俺たちにとってとても喜ばしいことなんです。誰も断りやしないです」
まさかそんな風に思ってもらえたとは。嬉しくて、心の奥がじんわりと温かくなった。
「‥ありがとう‥ございます」
「礼には及びません」
私は手に持っていた杏寿郎さんの刀の刀身と鉄穴森さんへの文を後藤さんへと渡した。
「よろしくお願いします」
「はい。確かに預かりました。それじゃあ、俺はこれで失礼します」
「はい。色々とありがとうございました」
そう言って頭を下げる私に後藤さんは
「‥元気になってきたみたいでよかった。助けが必要だったらいつでも遠慮なく言ってください」
それじゃあ、と任務へと戻って行った。
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それから1週間程後。
見廻りから戻ると丁度、千寿郎さんが門を掃き掃除している所だった。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい、ナオさん!お怪我などしていませんか?」
「はい。鬼の出没もなく、今回は本当に見廻りだけで済んでしまいました。なので今日は槇寿郎様に厳しめに稽古をお願いしようと思います!」
そう言って張り切る私に千寿郎さんは苦笑いを浮かべていた。
「程々にしてくださいね。あ、そういえばナオさんに、荷物と文が届いていましたよ」