第9章 火が灯るその日まで
「私‥杏寿郎さんに‥会いたい‥。寂しくて‥たまらないの‥。杏寿郎さんと‥最後まで戦うって‥そう約束したのに‥。杏寿郎さんがいないとだめ‥柱になんてなりたくない‥私‥ずっと杏寿郎さんの継子で‥いたい‥」
ボロボロと泣く私につられるように千寿郎さんも泣いている。そんな顔をさせてしまっているのは私。杏寿郎さんの代わりに守ってあげなきゃダメなのに。
「ナオさん‥」
グッと私に抱きつく千寿郎さんの腕の力が強くなった。でもその力が思いの外強くて‥よくよく確認すると、千寿郎さんの腕の上に槇寿郎様の腕も加わっていた。
「‥そう思っても良いんだ」
「‥っ!」
「我慢しなくて良い。俺には‥お前の気持ちがよく分かる」
‥そうか。槇寿郎様も、瑠火様という最愛の妻を亡くしていたんだ。愛するを失うことが‥こんなに辛くて苦しいなんて‥知らなかった。知った様な口をきいていた自分が心底恥ずかしい。
「っでも!私がもっと上手く戦えてたら!気絶なんてさせられなかったら‥杏寿郎さんは‥死ななくて済んだかもしれない!‥私は‥私が許せない‥憎くて憎くて堪らない‥」
ずっと心の奥で思っていた。あの時自分がもっと上手く戦えてたら。強かったら。そう思ったって何も変わらないのに。
でも
「悪いのはお前じゃない。責務を途中で投げ出した俺だ。俺が投げ出したから杏寿郎が代わりにやってくれたんだ。‥だからもう、自分を責めて泣くのはやめろ。そんなお前の姿を見たら‥杏寿郎が悲しむ」
そう言って槇寿郎様は眉を下げ困ったように微笑む。
その顔は杏寿郎さんそっくりだった。
「っ杏寿郎さん‥杏寿郎さん‥あぁーっ!!!」
壊れた人形のように私は泣き続けた。
気づくと私は布団の中だった。どうやら泣き疲れてあのまま寝てしまったらしい。最近まともに寝ることもできていなかったのでその影響もあったのだろう。
スッと襖が開いたかと思うと、そこには千寿郎さんの姿。
「‥入ってもよろしいですか?」
そんなの聞く必要ないのに。
「うん。‥どうぞ」
千寿郎さんは私の返事を聞くと、部屋に入り、わたしの隣に座った。
「‥心配かけて‥ごめんね」
「いいえ。でも僕は‥怒っています」
「うん‥ごめんね」
「違います。僕が怒っているのは‥ナオさんが、自分が死ねばよかったなんて言うからです」