• テキストサイズ

暖かく和やかに【鬼滅の刃】【煉獄さん】

第9章 火が灯るその日まで


「あの‥私任務が‥」

私が困惑していると

「お館様から"今日は休むように"と言付かっております」

と言われてしまった。

「‥っでも私‥」

「柏木様。休んで下さい。お館様の御命令です」

そう言われてしまえば、休みたくないとは言えるはずもなかった。

「‥わかりました。ここまで運んで頂きありがとうございました」

「とんでもございません!‥きちんとご飯を食べて、お休みになってくださいね」

そう言って、去って行った。






玄関はもうすぐそこなのに、私はその門をくぐれずにいた。どれだけそこに突っ立っていたのかわからない。けれども後ろから「すみません」と声を掛けられ、私はようやく我に返った。

「ここは煉獄様のお家でよろしかったかしら?」

「‥はい。そうですが‥‥何か御用ですか?」

気の良さそうなおばさんは、私のその言葉にホッとした表情を見せ、そしてニッコリと微笑んだ。

「頼まれていました御婚礼の衣装が出来たのでお待ちしました」

「‥っ!」

そうだ。何処かで見たことがあると思ったら、杏寿郎さんと2人で行った呉服屋の女将さんだ。

「あら?あなたよく見たらあの時の花嫁さんじゃない?雰囲気が全然違かったから気づかなかったわぁ!今日は花婿さんは一緒じゃないの?」

「‥あの‥あいにく‥外出しておりまして‥」

まさか"死んでしまいました"なんて言えるはずもない。

「あら残念!本当に素敵な花婿さんよねぇ!あんな良い男、滅多にお目にかかれないもの。あなた、良い旦那様を捕まえて幸せ者ねっ!」

私の強張った表情に全く気づかない女将さんは「はい、どうぞ!重いから気をつけてね」と私に風呂敷包を渡す。

「いやぁ!今の時代あんな風に愛情表現してくれる旦那様なんて珍しいわよ。大事にするのよ?じゃあ、末長くお幸せに」

そう言って満足気に帰っていった。

杏寿郎さんと2人でお店に行った時には、快活で商売上手な女将さんだと思った。でも、今の私にとって彼女は‥せっかく隠した心をほじくり返す悪魔のようにしか見えなかった。




‥少し眠りたい。




フラフラと門をくぐり玄関を開ける。履き物を脱ぐために風呂敷包をドサリと置くと、結び目が緩んでいたのかハラリと風呂敷包みが開いてしまった。



目に入ったのは、杏寿郎さんが着るはずだった紋付袴。

/ 391ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp