第9章 火が灯るその日まで
そして最後に
「‥不死川様っ!」
こちらに背を向け今にも帰ってしまいそうな不死川様にかけ寄る。
不死川様はあいかわらず怒ってるように見え、ギロッと目線だけをこちらによこした。
「‥っあの‥」
呼び止めたものの言葉が出てこない。
ちゃんと話さなきゃ。
そう思えば思う程、喉に言葉がつっかえ何も言えない。でも、早く話さないと帰ってしまう。
「‥っ私「悪かった」‥え‥?」
突然の謝罪とも取れる言葉に、私はどう反応して良いのかわからず固まってしまう。
「‥っ悪かったって言ったんだよ!返事くらいしろ!」
「‥っはい!‥すみません‥」
「謝れなんて言ってねえだろうがぁ!」
イライラすんなぁと、頭をガリガリかきむしる不死川様の肩をガッと組んだのは音柱様。
「まぁ落ち着けって!お前も、こいつが言ったこと地味に気にするなよ?なにせ実弥ちゃんは結婚の"け"の字も知らねぇガキんちょだからな!」
「ぶち殺すぞっ!」
「俺にも3人の可愛い嫁がいるからな!少なくともこいつと違ってお前の気持ちは派手に理解できる!」
私はこの状況についていけず、ポカンと惚けていた。
「お前、俺の話聞いてんのか?」
「っ聞いてます!すみません‥っ」
「謝んなって。まぁ俺が言いたい事は‥無理すんなよ。それだけだ」
音柱様はそう言うと、「離せぇ!」と騒ぐ不死川様を引き摺るようにして去っていった。
‥励ましてくれたのかな?
結局不死川様と話はできなかった。けれど、どっちにしろ何を話して良いか分からなかったから音柱様が連れていってくれて助かった。
水柱様と霞柱様はいつの間にかもういなくなっていた。せめて岩柱様には一言挨拶をして帰らなくてはと思っていると、あちらから私の方に近づいて来る。
その目は見えていないはずなのに、私の目の前でピタリと止まると私を見下ろすようにそのまま立っている。そして私が口を開くよりも先に、その大きな手で私の肩をポンポンと二度と叩くとそのまま何も言わずに去っていってしまった。
挨拶‥出来なかったな。
気づくと私を待っていてくれた隠と私の2人だけになっていた。私は急いでその隠の元へ行き「お待たせしました」と声を掛け、再び目隠しをされその背中に負ぶさられた。
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「着きましたよ」
降ろされたそこは煉獄家の前だった。
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