第9章 火が灯るその日まで
これ以上、甘えるわけにはいかない。でなければ私を庇ってくれた伊黒様やしのぶさん、そして蜜璃ちゃんの顔に泥を塗ることになってしまう。そして私を鍛えてくれた杏寿郎さんにも‥。
それだけは嫌。
「‥はい。お時間を頂けること、心より感謝致します‥」
「うん。他のみんなも、それで良いかな?」
誰も反対の声をあげる者はいなかった。不死川様も、あんなに怒っていたのに今は先程までの様子が嘘のように落ち着いている。
「わかってくれてありがとう。それじゃあ今日はこれで解散にさせてもらうよ。また次の会議でみんなの顔が見れるのを心から楽しみにしているよ」
「「「「御意」」」」
お館様は「それじゃあ、またね」と言うと、御息女に連れられお部屋へと戻っていった。
「柏木様、お家までお送りします。また目隠しをお願いしたいのですが宜しいですか?」
気づくと私をここまで連れて来てくれた隠が再び側に来ていた。
「あ、はい‥。でもその前に少しだけ‥待ってもらっても良いですか?」
私にはしなければならないことがある。
「どうぞ。用が済みましたらお声掛けください」
その隠の方は嫌な顔ひとつすることなく私のお願いを承諾してくれ、庭の端の方で待っていてくれるようだ。私は、まだ柱の方々がいる方へ振り向きまずは伊黒様がいる方へと進む。
「‥伊黒様。‥庇っていただいてありがとうございました」
深く頭を下げお礼を述べる。
「勘違いするな。お前の為じゃない」
そう言ってそっぽを向く伊黒様は、ネチネチして怖い部分もあるが‥とても優しい方なんだと今回初めて知った。
「それでも‥ありがとうございます」
伊黒様は「フンッ」と言って去っていってしまった。
次に私はしのぶさんと蜜璃ちゃんの元へと向かった。
「‥大丈夫ですか?」
私が何かを言うよりも先に、しのぶさんが私を気遣ってくれる。‥やはりしのぶさんはとても優しい。
「はい」
「ナオちゃん。辛い時は辛いって言って!泣きたい時は泣いて!私たち‥お友達なんだから‥ちゃんと頼って欲しいの」
蜜璃ちゃんが私の手をギュッと握り締める。その力はやはりちょっと強くて痛かったけど、その言葉がただただ嬉しかった。
「‥蜜璃ちゃん‥ありがとう。しのぶさんも‥ありがとうございます」
2人にも頭を下げる。