第8章 燃え尽きる
「獣ノ呼吸壱ノ牙穿ち抜き‥」
これなら勝てる!頸を切れる!
そう思った。
そう思ったのに。
猗窩座は自らの腕をちぎり捨て、杏寿郎さんの日輪刀を折り、杏寿郎さんから、私達から逃げ出した。
「‥っ待て!」
私は猗窩座を追いかけようと直ぐに走りだした。でも走り出す時、杏寿郎さんの膝がガクリと折れるのが‥見えてしまった。
でもどうしても諦めならなくて、文字通り杏寿郎さんが命をかけて戦い抜いて‥それなのに逃げ出した猗窩座が許せなくて‥森の中を駆けていく猗窩座を追おうとした。でも明らかに猗窩座の逃げ足は速すぎて、追いつけないことは明白だった。猗窩座は身体に刺さったままの杏寿郎さんの日輪刀を抜くと、そのままポイと投げ捨てた。
それがまるで杏寿郎さんの命を粗末に扱われたようで、堪らなく悔しかった。ぼうっとそれを眺めていると、後ろから足音が聞こえ、なにかが真横を猛スピードで通り過ぎていった。
それは炭治郎くんの日輪刀で、炭治郎くんは私の気持ちを代弁してくれるかのように猗窩座に向かって叫んでいた。
「逃げるな!逃げるな卑怯者!逃げるなぁ!」
もう私は‥泣くことしか出来なかった。
杏寿郎さんの元へ早く戻らないと‥死んでしまう。でも‥戻るには‥杏寿郎さんとお別れする覚悟を決めないといけない。ぐちゃぐちゃな気持ちのまま、私は振り返り羽織と隊服の上を脱ぎながら杏寿郎さんの元へと脚をすすめた。
「杏寿郎さん‥」
杏寿郎さんは優しく微笑み、自分のために叫ぶ炭治郎くんを見ていた。
「ナオ‥怪我は大丈夫か?」
こんな時まで‥人の心配なんてしてる場合じゃないのに。
私は脱いだ隊服をまず最初に杏寿郎さんの腹に巻きつけ、その後、羽織も巻きつけた。こんな腕、直ぐにでも消え去って欲しかった。でも、それをしてしまえば途端に出血量は増え、杏寿郎さんと話ができる時間が‥減ってしまう。
「私は大丈夫です‥」
杏寿郎さんは‥大丈夫じゃないのが明白で、私は何も聞く事ができない。
「‥先に、竈門少年と話をしても良いだろうか?」
こんな時でも自分じゃなくて、まわりの人を優先する。私はやはりそんな杏寿郎さんを心からの愛している。
「もちろんです。呼んできましょうか?」
「いや。俺が自分で呼ぼう‥」
杏寿郎さんはそう言って少し黙ったあと、炭治郎くんに声を掛けた。
