第8章 燃え尽きる
「はい。‥何かおかしいでしょうか?」
「えっ‥だって‥」
そんなのおかしい。だって私が煉獄家に来てから、杏寿郎さんと槇寿郎様が一緒に外出どころかちゃんとした会話を交わしている所すら見た事がないのに。2人で街に行っている?そんなのおかしい。千寿郎さんだってその事を嫌って程知っているはずなのに‥。
固まっている私を千寿郎さんが心配そうに覗き込んでくる。
「義姉上‥やはりまた悪阻がぶり返してしまったのでしょうか‥?」
"悪阻"。
ガチャン。
「っ大丈夫ですか!?今拭くものを持ってきます!」
千寿郎さんのその言葉に驚愕した私は、持っていた湯呑みを落とした。
やっぱりおかしい。私に悪阻なんてあるはずない。だって‥まだ祝言もあげてない。妊娠なんて‥してないのに。
なんとか状況を理解しようと頭を働かせようとしていると
「ナオ!今帰った!」
杏寿郎さんの声が聞こえてきた。大好きな人の声につられそちらを向くとそこにはたくさんの荷物を抱えた杏寿郎さんと、‥槇寿郎様の姿。
「‥っ!」
その光景は、ずっとずっと望んでいた光景で思わず言葉に詰まって何も言えなかった。それと同時に、望んでいたはずの光景にとてつもない違和感を感じ、私の頭は完全に混乱していた。
何も答えない私を不思議に思ったのか、杏寿郎さんは持っていた荷物を槇寿郎様に押し付け、私の元に駆けてきた。
「ナオ?どうした?また具合が悪いのか!?」
私の両肩を掴み、慌てたように顔を覗き込んでくる杏寿郎さん。その姿は、声は、まさしく杏寿郎さんそのもので私が違和感を感じている事がおかしいのかとすら思えてくる。
「‥いいえ。なんでもないんです‥」
杏寿郎さんは私の答えに安心したのかホッと息を吐きニコリと微笑んだ。
「ならば良いのだが!千寿郎はどこだ?」
「あの‥私が湯呑みを割ってしまって‥拭くものを取りに行っている所です」
「怪我はしなかったか?」
「はい。大丈夫です」
パタパタとこちらに向かってくる足音が聞こえ、千寿郎さんが手ぬぐいを持ち戻ってきた。
「兄上!おかえりなさいませ!欲しい食材は手に入りましたか?」
「うむ!ナオにはたくさん栄養を取ってもらわねばならないからな!早速作ろう!」
その言葉に、先ほど感じた違和感が再び戻ってくる。