第8章 燃え尽きる
「‥愛情深い‥音?」
「はい。俺、あんなに心地良い音今まで聞いたことなくって。あんな風にナオさんに思ってもらえる煉獄さんが羨ましいって思ったんです。だから思わずじっと見ちゃって‥すみませんでした!」
‥成る程。そんなことまでわかってしまうのか。なんとも恥ずかしい限りだ。
「‥いいんだよ。私が師範の事を‥杏寿郎さんの事が大好きなのは本当のことだし。私の‥誇りでもあるから」
「あー!ますます羨ましい!2人は夫婦になって長いんですか?」
「あ‥実はね、まだ私たち結婚はしてないの」
私のその言葉に、善逸くんは瞳が飛び出しそうなほど驚き「はーっ!?」と、大声をあげた。
「え?じゃあなに?結婚してないのにあの人ナオさんのこと妻とか言っちゃってるんですか?いくらあっちからも同じくらい深い音がするからってそれはヤバくないですか?逃げた方が良いんじゃないですか?」
今さらっと善逸くんがとても嬉しいことを言っていた気がする。
「祝言はね、この任務が終わってから挙げることになってるの」
「あ、そう言うことですね。それにしても妻って紹介するのにはちょっと早くありません?」
「ふふっ。私もそう思ってるんだけど、言ってもどうしようもないからもう放って置いてるの。それに‥実は妻って紹介されるの‥ちょっと嬉しいの」
口に手を当て耳元でコソッとそう告げた私に善逸くんは
「‥そういうの、横文字でバカップルって言うんじゃないですか」
なんて呆れていた。
「ナオ、こっちに来てもらえるか?」
「あ、はい!じゃあ善逸くん。伊之助くん。私はあっちに戻るね」
善逸くんは身体をクネクネ動かしてゴネている。伊之助くんは相変わらず外を見るのに夢中なようだ。
「えー!寂しい!またこっちに遊びに来てくださいね!」
善逸くんのその動きははっきり言って気持ち悪いが、善逸くんはなんだか‥それはそれでかわいい弟のように思えた。
「うん。わかったよ」
またねと告げ、道を挟んだ隣の座席に戻った。
「杏寿郎さん、何か用でしょうか?」
本来であれば任務中なので、"師範"と呼ぶべきなのだが、先ほど杏寿郎さんに"妻"と言われてしまったので今更師範と呼ぶのも可笑しいかなと思い、いつもの呼び方に戻させてもらった。