第8章 燃え尽きる
「‥煉獄さん」
杏寿郎さんは気づいているのかいないのか、炭治郎くんに話しかけられているのにも関わらず弁当を食べ続ける。
「あ!炭治郎くん!」
「‥あ!ナオさん!」
「うまい!」
「あ、もうそれは十分わかりました‥」
「‥なんか‥師範がごめんね‥」
「あははは‥」
明らかに困っている炭治郎くんに、何故か私が謝ってしまった。
給仕の女性を呼び、沢山の空になった弁当箱を片付けてもらうとようやく席もスッキリした。
「君はお館様の時の」
「はい。竈門炭治郎です。こっちは同じ鬼殺隊の、我妻善逸と嘴平伊之助です」
そう言って2人を紹介する炭治郎くんは、やはり根っからの長男気質に見える。
「あれ!?そこに座っているのはもしやナオさんじゃない!?なんでナオさんもいるの!?」
私の存在にようやく気がついた善逸くんが騒ぎ始め、炭治郎くんに「善逸!恥ずかしいから少し声を抑えてくれ!」と怒られている。そうそう。それだよ炭治郎くん。私も杏寿郎さんに‥そう言えれば良かったのに。
「3人ともこの間ぶりだね。元気だった?」
「元気です!ナオさんに会えたのでさらに元気になりました!こんなに早くまた会えるなんて俺嬉し過ぎるぅ」
「よう!雌虎!俺と勝負しろ!」
「ふふっ。じゃあ任務が終わったらまた一緒に鍛錬しようね。ねぇでも待って。雌虎ってわたしのこと?」
なんて、善逸くんと伊之助くんと話していると、炭治郎くんから視線を感じた。その目線がなんだか尋常じゃない。何だろうと考えながら、ふと炭治郎くんの隣を見るとつい先ほどまで笑っていた善逸くんも顔を青くしている。更に隣を見ると伊之助くんも小刻みに震えている。
「え?何?3人とも急に‥どう‥し‥たの‥」
私の言葉はどんどん尻すぼみになっていく。だって気がついてしまった。炭治郎くんの視線に気を取られて気づかなかったが、私の向かいに座っている杏寿郎さんからも‥物凄く視線を感じる。
チラリと盗み見ると、一見無表情に見えるが、間違いなく怒っている杏寿郎さん。
サッと視線を元に戻し、助けを求めるように3人を見たが、ブンブンと顔を全力で顔を横に振られ拒否を示される。
「ナオ」
ビクッと肩が跳ねる。
「‥はい」