第2章 青から赤へ
次に目が覚めるともう朝になっていた。さっき目が覚めた時にはまだ刺さっていた点滴もいつの間にやら外されている。やはりまだまだ身体は休息を必要としているのだろう。けれどどうしても朝の空気を直接感じたくなり身体をゆっくりと起こしベットから降りる。
「‥よし。問題なさそう」
万が一無理をして倒れでもしたら蝶屋敷の人達の仕事を増やしてしまうことになりかねないので、まずはゆっくり歩く事が出来るかを確認してから病室を出る。中庭までの道は何となく把握していたので、他の療養している人を起こすことがないようコソコソ移動する。
「はぁ‥朝の空気が美味しい」
縁側に座りヒラヒラと舞う蝶々を見ながら深い深呼吸をする。暫く朝の空気を堪能していたがふと現実に引き戻される。
「‥これからどうしよう」
鬼殺隊士になることを決めたあの日からずっとあの鬼を殺すことだけを考えてきた。仇を撃ち終わったから鬼殺隊を辞めるなんて選択肢はもちろんないが目標を無くした今、自分が今後どうして行くべきなのかわからなくなってしまった。
「こちらにいらしたのですね。勝手に病室を出て行かれては困ります」
「ひゃっ!」
グルグルと意味もなく思考を巡らせていた為、人が近づいて来ていることに全く気が付かず変な声が出た。
「しのぶさん‥すみません。なんだか外の空気が吸いたくなってしまって‥」
「まだ病み上がりなのですからできるだけ安静にお願いしますね。食事の準備ができましたのでお部屋に戻って下さい」
グー。その言葉を聞きまるで思い出したかのようにお腹が情けない音を立て、頬がボボボッと熱くなるのを感じる。
「‥‥はい」
穴があったら入りたい‥な
「ご馳走様でした」
出された食事を綺麗に食べ終え、久しぶりの食事に思わず笑みが溢れる。美味しさの余韻に浸るのも束の間、またあのどうしようもない思考の波に攫われそうになり、はーっと溜息が漏れる。
コンコン。
「おはようございます。朝の診察に来ました。体調の方はどうかしら?」
「おはようございます!体調は悪くないかと思います。朝食もとても美味しくて‥おかわりを頂きたいくらいでした」
「ふふっ。それはとっても良いことね」
しまった。余計な事まで言ってしまった。
カナエ様の笑みに自分の発した言葉が急に恥ずかしくなる。