第7章 幸せに手が届く
「‥僕もナオさんが義姉上になってくれる日をずっと心待ちにしていました」
千寿郎さんが遠慮がちに私を抱きしめ返してくれる。
「ナオさんが来てくれるようになってから、兄上はひとりで無理をなさる事が減りました。‥ナオさんといるときの兄上はとても幸せそうで、それを見る僕も自然と幸せな気持ちになれました。任務に出ても、ナオさんが兄上の側にいてくれると思うと、眠れない夜を過ごすことが減りました。‥全部、ナオさんのお陰です」
そう言った手は心なしか震えていて、私は千寿郎さんに安心して欲しくてその背中をポンポン撫でた。杏寿郎さんがいつか、私にしてくれた時のように。
「‥兄上と同じです」
「え?」
「兄上がよく僕にしてくれたのと‥似ています」
「‥そっか。私もこうやって、杏寿郎さんにしてもらったの」
千寿郎さんは小さい声で「そうですか‥」と言った後、私に回していた腕を離した。流石にこんな姿を槇寿郎様に見られたらまずいと思い私も千寿郎さんから腕を離した。目が合うと、千寿郎さんは恥ずかしげに微笑んだ。
亡くなった瑠火様の代わりになれるなんて烏滸がましいこと思わない。それでも杏寿郎さんだけでなく、千寿郎さんの寂しさに寄り添えるような‥家族になりたいと心から思った。
「‥一緒にご飯の準備‥しようか!」
「‥はい!」
私と千寿郎さんは並んで台所まで向かい、ふたり一緒に準備をし、向かい合って仲良く夕食を取った。
先に任務に向かった杏寿郎さんから連絡が来たのは明け方の事だった。
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駅に着き、人混み見渡すと見慣れた愛する背中を見つける。
「杏寿郎さん!お待たせしてすみません‥ってその風呂敷はなんです?」
両手に重そうな風呂敷に包まれた何か。これから列車に乗り込むと言うのに、杏寿郎さんは一体何を持っているのか。
「うむ!これは牛鍋弁当だ!このお二人からたった今買わせてもらった!」
牛鍋弁当‥。
杏寿郎さんはさもそれが普通のことのように言っているが、その量は明らかに多すぎるし、絶対に買い占めた感じになっている。私がその弁当を見てポカンとしていると
「先程話した俺の妻です!」
「まぁこの方が!お伺いしておりました通り素敵な方ですね」
いやいや。お弁当屋さんと一体なにを話したのか。