第7章 幸せに手が届く
「え?‥ナオさんってそんなに強いの?こんなに穏やかで優しそうなのに?」
なんだかその善逸くんの反応は既視感がある。
「そうですね。単純な剣術だけなら恐らく私よりは強いかと」
「「え」」
しのぶさんの思わぬ発言に、彼ら同様私も驚いた
「それはちょっと言い過ぎです!」
「あら。謙遜はいけませんよ。なにせナオさんは誰もが逃げ出すというあの厳しい稽古をやり遂げた、唯一の継子なんですから。誇ってください」
そんな話も確かに聞いた事がある。ただ、私が杏寿郎さんの厳しい稽古に耐えられたのは杏寿郎さんに対して、他の人とは違う感情を抱いてからに過ぎない。
「‥ありがとうございます」
でも純粋に、柱であるしのぶさんにそう言ってもらえる事は嬉しかった。
「では、お喋りはこの辺にして始めましょうか」
「よっしゃ!やるぜ!そっこー捕まえてやる!」
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「はい。そこまでです」
ばったり倒れる3人を尻目に、私はまだ十分余力がある。私もきっと、昔は杏寿郎さんからすればこんな感じだったのだろうか。
「‥全然‥届きもしなかった‥」
「こんな強いなんて聞いてないよぉ」
「‥お前‥虎の番だからそんなに速えのか」
他の2人は兎も角、伊之助くんは一体何を言っているのだろうか。
「個々の能力は凄く良いと思う。でも時には連携を取る事が鬼の頸を取ることにおいて重要な場合もあるから。そう言う状況を想定して、今回みたいに訓練してみるのも大切だよ」
倒れながらも私の話にきちんと耳を傾ける3人に、この子達はきっと強くなるなと確信めいた物を感じた。
「それじゃあそろそろ師範が戻る時間だから、私はお暇させて貰うね。良かったら今度、うちの師範の稽古を受けに来て頂戴。きっと貴方達の力になると思うから」
「はい!必ず伺います!」
「待ってるね」
私は3人に別れの挨拶を終え、入り口付近で佇むしのぶさんの方へ向かった。
「お疲れ様でした。急なお願いにもかかわらず聞いていただきありがとうござました」
「いいえ!私にとっても、とても良い体験になりました」
「そう言ってもらえるとこちらも貴方に頼んだ甲斐があります。確か明日から無限列車での任務でしたよね?お気をつけて行って来て下さい」
そう。それが終われば私はようやく杏寿郎さんの妻になれる。