第7章 幸せに手が届く
「2人の幸せが末長く続く事を願っているよ」
「「ありがとうございます」」
お館様からの温かいお言葉が、こころの奥まで染み渡ってくるようだ。
「皆も聞いて欲しい。私の願いは鬼を殲滅する事。今までもこれからもその願いは変わらない。でもそれと同じくらい、君たちに自分の幸せを掴んで欲しいとも思っている。決して自分を犠牲にしないで欲しい。だからナオ、約束して欲しい。もし杏寿郎との子を身籠ったらすぐに報告して欲しい。そして任務に行く事は辞めて欲しい」
お館様様からの思いもよらぬ言葉に私は思わず目を見開く。
杏寿郎さんと私の‥ややこ。
そんなこと考えてもみなかった。杏寿郎さんの妻としてそばに居られればそれで良いと思っていた。でも、お館様に言われはじめて想像した。
杏寿郎さんが、杏寿郎さんそっくりのややこを抱いている姿。‥なんて幸せなんだろう。きっと千寿郎さんはとても可愛がってくれる。もしかしたら槇寿郎様だって‥。
「無論、もとよりそのつもりです!」
バッと杏寿郎さんの顔を見ると確かな意思を持った目でお館様を見ている。
「鬼殺隊を続けると言うナオの意思はもちろん尊重する!だが子が出来た場合、赤子のため、ナオのため、そして俺自身のために前線は退いてもらうつもりです!」
杏寿郎さんが、そこまで考えていてくれてるとは‥全く知らなかった。ただ杏寿郎さんの側で、杏寿郎さんを守る為に戦えればそれで良いと思っていた。でも‥杏寿郎さんがもしそれをの望まない時が来るのであれば‥私はそれに従いたい。
「杏寿郎の気持ちはわかったよ。ナオは鬼殺隊として貴重な階級の高い隊士で炎柱の継子。それでも私は、ナオ自身の幸せを選ぶ事を戸惑わないで欲しい。皆もそれをわかってもらいたい」
異論を唱える者はいなかった。
私は、なんて幸せ者なんだろう。
杏寿郎さんとお館様の言葉にじわりと目頭が熱くなる。
「わかってくれてありがとう。それじゃあナオ、下がって良いよ」
「はい。貴重なお時間を頂き誠にありがとうございました。お館様のご健康を心よりお祈りしております」
「ありがとうナオ」
お館様は隠を呼びつけると、私を煉獄家へ送るよう言ってくれた。こうして私は、結婚前最大の試練を乗り越えた。