第7章 幸せに手が届く
杏寿郎さんはと言うと、自分には関係ないと言わんばかりにいつもの笑顔を浮かべてニコニコとこちらを見ていた。
「もう!杏寿郎さん!少しは助けて下さいよ!」
「む?すまない!あまりにもナオが楽しそうなのでつい!君のそんな顔が見られて俺は嬉しい!」
「‥っ!」
蜜璃ちゃんやしのぶさんの前なのに、恥ずかしげもなくそんな事を言うもんだから私の頬は急激に熱を帯びる。蜜璃ちゃんからは「愛だわ!」なんて聞こえるし、しのぶさんは「あらあら」なんて言いながら生暖かい目で私を見ている。
「オイオイ随分と派手に惚気てるじゃねぇか」
フッ目の前に急に壁が現れた。
え?何?金のボタン‥?と言うことは柱?
顔を上げたその先に見えたのは派手な化粧を施し、額にこれまた派手な額当てをつけている音柱様。音柱様は私にズイッと近づくと、顔がくっつきそうなほどな距離で私を凝視する。そのおかしな距離感に、思わず一歩後ずさる。
「前見た時は堅物で色気の欠片もないやつだと思ったが‥しばらく見ない間に随分良い女になったじゃねぇか」
‥柱とはいえなんて失礼な物言いだろうか。それに私としては音柱様と直接的にお会いするのはほぼ初めてのはず。そんな事を考えて硬直していると、グイッと腕を引っ張られる。力に従うまま倒れ込んだ先には杏寿郎さんの姿。「キャー!」と蜜璃ちゃんが声をあげたのが聞こえる。
「宇髄!彼女に不用意に近づくのはやめてもらいたい!」
杏寿郎さんの声は心なしが怒っていた。
「彼女は俺の大事な妻だ!いくら同じ柱の君とはいえ渡すことは出来ない!」
またしても蜜璃ちゃんの叫び声が聞こえる。私はといえば人前で恥ずかしげもなくそんな事を言いのけ、まるで外敵から守るように杏寿郎さんに抱きしめられる状況に、恥ずかしさから震えていた。
「いや、いらねぇし!」
「そうか!なら良い!」
‥どうやら解決したようだが杏寿郎さんの手が緩まる様子はない。
「あの‥杏寿郎さん‥そろそろ離してもらえないでしょうか‥?」
何故だ?と言わんばかりの顔で私をみる杏寿郎さん。いやいやこの状況を考えて欲しい。
「‥守ってくれるのは嬉しいのですが‥流石に恥ずかしいです‥」
ボソリと呟いた私の言葉に、杏寿郎さんは何故か満足げに微笑んだ後私を解放した。