第7章 幸せに手が届く
事は性急に、且つ濃密に行われた。
いつもなら数回は行われるそれも、見回りの時間が迫っている事、槇寿郎様と千寿郎さんが在宅な事、私がまだ病み上がりという点から一回にとどめられた。その一回でも私はもうヘロヘロで余韻から抜け出せず、布団に横たわっていた。
普段であれば一緒にその余韻に浸ってくれる杏寿郎さんも、間もなく見回りに出るとあって、すぐに布団から出て行き、衣服を整えていた。
なんだかそれが寂しく思え、ジーッと杏寿郎さんを見つめていると視線を感じ取ったであろう杏寿郎さんと目があってしまった。
「‥そんな物欲しそうな目で見るんじゃない」
「っ物欲しそうな目なんてしてませんっ!」
まるで私が一回の行為では満足いかなかったみたいな言い方‥恥ずかしい事この上ない。‥寂しく思っていたのは事実だが。
まだだるい身体を起こし、いそいそと服を着直す。
「わはは!冗談だ!だがしかし、あまりのんびりしていては千寿郎に不審に思われてしまう!疲れているところ申し訳ないが、そろそろ行かなくてはならない」
「そうですよね‥急ぐのでもう少しお待ちください」
急ごうとしているのだが‥いかんせんまだ身体のだるさが抜け切らずどうしてもノロノロとした動きになってしまう。すると、自身の支度を終えた杏寿郎さんが此方へと近づいてきて、服を着るのを手伝ってくれた。
「‥すみません。ありがとうございます」
「礼には及ばない!君が疲れているのは俺のせいだからな!」
その物言いに、なんだか恥ずかしさを覚え頬に熱が集まる。杏寿郎さんのお陰であっという間に服は元通りとなった。
「うむ!出来たな!」
「はい」
杏寿郎さんは再び私を抱きしめ、
「‥見廻りを終え、君が待つこの部屋に戻ってくるのを楽しみにしている」
と優しく言った。
「私も、杏寿郎さんとこの部屋で共に過ごせるのを楽しみにしています」
夜が明けるまでは戻ってこないかもしれない。それでも、杏寿郎さんの気配をたくさん感じるこの部屋で待ったいられるという事が、とても特別で幸せな事だと感じた。
ちぅ、っと最後に一度口付けを交わし部屋を後にする。
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「兄上、行ってらっしゃいませ」
「杏寿郎さん、行ってらっしゃい」
「うむ!行ってくる!」
千寿郎さんと2人で切り火をし、見廻りに行く杏寿郎さんを見送った。
