第7章 幸せに手が届く
「‥ずるいですっ杏寿郎さん!私がそうやってお願いされると断れないの分かってて‥っ」
今度は先程とは違い、妖艶な笑みを浮かべ私の耳元に口を寄せ
「俺がそんなずるい人間に見えるか?」
ゾワリとした耳をバッと抑え距離を取ろうと試みるが、反対の手を取られてしまい引き寄せられる。
「‥薬を、取ってきなさい」
愛する杏寿郎さんにそんな風に言われたら逆らえるはずもなく、しのぶさんからもらった包みから塗り薬をおずおずと取り出す。
「ん、良い子だ。脚を出しなさい」
まるで催眠術にでもかかってしまったかの様に、杏寿郎さんの言われるがままに従ってしまうこの身体。
着物をまくり、包帯が丁寧に解かれて行く様子に妙にドキドキする。
「やはりまだ酷いな。だが胡蝶が調合してくれた塗り薬。きっとすぐに良くなる」
杏寿郎さんは薬の蓋を開け、指で掬い取るとそれを優しく塗り込む。
「‥っん‥‥」
痛みと羞恥で‥変な声が出てしまうのを懸命に抑える。杏寿郎さんは薬を塗ってくれているだけなのに‥私の女の部分が堪らなく疼きだす。それを悟られない様に、目をギュッとつぶり手で口を押さえる。
その行為が、逆に杏寿郎さんを興奮させているとも知らずに。
解いた包帯をまた巻き直し、杏寿郎さんの手は離れて行った。
やっと終わった‥。
「杏寿郎さん、ありがとうございまし‥た‥」
お礼を述べるために杏寿郎さんの方を見ると、熱を孕んだ目と視線がかち合った。それがまだ‥私の女の部分をさらに大きく刺激する。
「‥まだ傷が治り切っていないことは十分に理解している‥だが俺は今、堪らなくナオが欲しい」
「‥っ!」
前回情を交わしたのは‥いつだったか。基本的には槇寿郎様と千寿郎さんが不在時しかそう言った行為はしてこなかった。だが今は2人ともいるし、もうすぐ杏寿郎さんは見廻りに出なければならない。
でも
「‥私も‥杏寿郎さんが‥欲しいです‥」
自分からそんなことを言うなんて、はしたないことは重々承知している。でも‥この火がついてしまった欲求を冷ます術が見つからない。
杏寿郎さんはいつぞやと同じように布団を引っ張り出すと、そこに座り
「来なさい」
と腕を広げ私を呼び寄せる。吸い込まれるようにそこまで行き、熱い抱擁を交わした後、静かに布団へと押し倒された。