第7章 幸せに手が届く
思い浮かんだのはその視線で、人でも殺せそうな目でこちらを睨む風柱様。何を考えているかわからない表情でこちらをただただ見る水柱様。そしてネチネチと嫌味を言いながら蛇のようなねっとりとした視線でこちらを見る蛇柱様。
心なしが背筋が寒くなってきた気がする。
「杏寿郎さん‥私‥緊張で‥死んでしまうかもしれません」
「そんなことで死んでもらっては困る」
杏寿郎さんは大真面目な顔で言った。
「みな個性的ではあるが、強い志を持った素晴らしい者たちだ!きっと俺たちのことを祝福してくれる!」
‥だったら良いのだけど‥。
貴重な柱合会議の時間をこんな事に!‥なんて怒られやしないだろうかと、私の胸は不安でいっぱいだった。
「千寿郎さん‥その日‥一緒に来てください」
思わずすぐ隣にいた千寿郎さんの腕を掴む。
「‥いくらナオさんのお願いでも‥そればっかりは‥」
「こら!千寿郎を困らせるんじゃない!」
ベリっと杏寿郎さんに千寿郎さんの腕から引き剥がされ、そのまま立ち上がらされる。
「見廻り前にナオと2人で話しておくことがある故先に部屋に戻る!」
「わかりました!お出掛けになる際は一声かけてから出かけて下さい」
「うむ!承知した!」
「私も今日まで任務を休むように言われているので、千寿郎さんと一緒に杏寿郎さんをお見送りします」
「はい。それでは後ほど」
杏寿郎さんの手に引かれ、向かった先は私の部屋。婚礼の儀の話し合いでもするのだろうか?と思っていたが杏寿郎さんは仕舞われている私の布団や、その辺にある私が普段使用している棚などを持てるだけ持ち出した。
「‥杏寿郎さん‥?いったい何を‥?」
振り向いた杏寿郎さんは満面の笑みで
「引っ越しだ!」
と言った。
「君は着る物を持ってくれ!」
訳もわからずとりあえず言われるがままに予備の隊服や寝巻き、普段着用の着物を数枚取り出す。
「‥あの‥引っ越しって‥」
「俺の部屋に決まっているだろう!」
「えっ!?」
今日の今日で?まだ正式な婚姻はすませていないのに?
「‥杏寿郎さん!それはいくらなんでも‥正式に夫婦となってからの方が良いのでは‥?槇寿郎様にも‥怒られてしまいませんか?」
杏寿郎さんは私の言葉を聞いているのか聞いていないのか、荷物を持ち部屋を出て行ってしまう。