第7章 幸せに手が届く
そのまま杏寿郎さんの部屋まで連れて行かれたかと思うと、部屋に入るなりギュッと強く抱き締められる。
「‥君は、俺のことだけでなく、父上や千寿郎の事もそんな風に思っていてくれたのだな」
大好きな杏寿郎さんの腕の中、私はその心地よい声と力強い鼓動にこの上ない幸福を感じていた。
「‥愛する人の家族を大切に思う事は当たり前のことです」
世の中、そうも行かない場合はある。でも私は、煉獄家は決してそうではないと信じている。瑠火様という失ったピースの代わりには到底なれないが、それでもこの不器用で愛おしい3人を繋ぐきっかけになれたらと‥願わずにはいられなかった。
———————————-
その日の夕食は、私の好物で埋め尽くされていた。一緒に作ると言ったのだが「病み上がりなんですからナオさんはまだ大人しくしていてください!」と千寿郎さんに台所から追い出されてしまった。ならばと思い久々に鍛錬でもしようと、稽古場に向かおうとしていると「病み上がりなんだから今日は大人しくしていろ!」と杏寿郎さんに引き止められた。その兄弟まったく同じ反応が面白くて、私は久々にお腹と抱えて笑った。そんな私を杏寿郎さんは不思議そうに見ていた。
「婚礼の儀はいつ頃行う予定ですか?」
食後のほほんとお茶を啜っていると千寿郎さんにそう聞かれた。そして私は気づいてしまった。私に身内という身内はもういない。故に準備する嫁入り道具はおろか、婚礼の儀を執り行う事すら出来ないのではと。私が1人青くなっていると
「うむ!ナオの花嫁姿を見たい故するにはするがそんな畏まったものにするつもりはない!お館様や親しい者だけお呼びしてお披露目する程度にすませるつもりだ!」
杏寿郎さんのその言葉にホッとした。きっと身内のいない私に対する心遣いもあっての事だろう。
「数日後にある柱合会議にて、先に他の柱の前で挨拶はする予定となっているがな!」
「‥っゴホっゴホ!」
「わ!ナオさん!大丈夫ですか!?」
杏寿郎さんのその爆弾発言に私は驚き、お茶を変な風に飲み込んでしまい咽せる。
「‥っ、そんな話!初耳なんですが!」
「む?言っていなかっただろうか?」
「聞いてないですぅ!‥柱の‥みなさま‥‥」
思わず頭に浮かんできたのは苦手意識のある柱の面々。