第7章 幸せに手が届く
荷物を部屋に置くとすぐ槇寿郎さんの部屋に向かった。
「父上!杏寿郎とナオです!話がある故、部屋に参りました!」
杏寿郎さんがそう声を掛けるが‥相わらず返事はない。杏寿郎さんがチラリとこちらを見る。その瞳と目線が合うと、行くぞと言わんばかりに杏寿郎さんが一つ頷く。
覚悟はもう出来ている。
ザッと襖を開くと、やはりそこには例の如く布団に横たわる槇寿郎様のお姿。その横に、杏寿郎さんと私、並んで正座をする。
「先日ご報告した通り、ナオ妻に迎える事になりました!」
あ、もう決定事項みたいになっているのね。お願いとかそういう段階はもう飛び越しちゃってるのね。内心杏寿郎さんに突っ込みつつ顔色は崩さない。
言うべきことは‥自分の口でちゃんと言う。
「槇寿郎様。以前もお話しさせていただいた通り、私が杏寿郎様の妻となるのを許していただきたく参りました。至らない部分もありますが、自分なりに杏寿郎様の隣にいても恥ずかしくない程度に強くなれたと‥そう思っております。私の望みは今までも、これからも変わらず杏寿郎様のお側で、杏寿郎様を支え助ける事です。そして杏寿郎様の大切なご家族である槇寿郎様や、千寿郎さんの事も同じように大切にしていきたいと思っております」
その言葉に、杏寿郎さんがピクリと反応したように見える。
「‥その権利を得る事を‥どうかお許し下さい‥」
「‥お前らがどうなろうと俺には関係ない。勝手に結婚でもなんでもしろ」
やはりそう言われると思っていた。でも‥鬼殺隊を辞めろと言われなくなっただけでも大きな進歩なのかもしれない。
「‥お認めいただいたと、勝手ながら解釈させていただきます」
「好きにしろ」
「あり「ありがとうございます!では!ナオがまだ病み上がり故、これにて失礼します!」」
私がお礼を言い切る前に杏寿郎さんは被せるようにそう言うと、まるで急かすように私を立たせ部屋を出た。なぜ急かされたのかいまいちわからないが。
「‥お前の努力だけは認めてやる」
閉まりかけの襖の向こうで槇寿郎様がボソリとそう呟いたのを、私は聞き逃さなかった。
「‥っありがとうございます!」
じわりと目元が熱くなる。そんな私の様子に気づいた杏寿郎さんは、優しく微笑み槇寿郎様の部屋の前にも関わらず触れるだけの口づけを私に落とす。