第7章 幸せに手が届く
待て待て。私の知らないところで、私に関する凄く大切な話しが勝手に進んでいる。
「‥っちょっと待ってください杏寿郎さん!」
「む!なんだろうか!」
「私まだ階級が上がると決まったわけではありません!」
「いや!烏からすでに報告は受けた!君の階級は甲に上る!」
「‥っでも!まだ槇寿郎様にご報告も出来ていません!」
「うむ!それはすでに俺から済ませた!お館様にも報告済みだ!」
自分が寝ている間にそこまで。勝手に1人で話を進めてしまった杏寿郎さんに苛立ちを覚える。
「‥っどうして勝手なことするんですか!杏寿郎さんだけじゃなく、2人の問題ですよね!?」
思わず声を荒げてしまった私に
「ナオさん、落ち着いて下さい。そんなに興奮しては治るものも治らなくなってしまいます。煉獄さんも、もう少しきちんと説明してあげても良いんじゃないですか?」
としのぶさんが助け舟を出してくた。杏寿郎さんは考えるそぶりを見せた後、
「その通りだな。ナオ。勝手なことをしてすまなかった。だがしかし、こうなった今、俺は一日でも早く君を妻に迎えたい。一日たりとも君との時間を無駄にしたくないんだ」
と普段は釣り上がっている眉を下げ、心なしが悲しそうにそう言った。
「‥っ‥!」
そんな風に、そんな顔で言うなんてずるい。それじゃあ‥怒れるはずもない。
「‥私だって‥杏寿郎さんと同じ気持ちです。すぐにでも杏寿郎さんと夫婦に‥家族になりたいと思っています。‥怒鳴ってしまって‥すみません」
「いや!悪いのは俺だ!君が謝る必要はない」
杏寿郎さんはそう言って、今度は優しく私を抱き締めてくれた。杏寿郎さんの顔が見たくて顔をあげると目が合う。そしてだんだんと近寄って来る端正な顔に瞳を閉じる。
「あのー。お二人の世界に入るのもいいですが、私がここにいるのを忘れないで下さい」
「‥っ!ごめんなさいっ!」
「よもや!」
火事場の馬鹿力とでも言うのか。しのぶさんの存在をようやく、思い出した私は、迫って来ていた杏寿郎さんを力一杯突き飛ばしてしまった。
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あの後杏寿郎さんは本気で私の火傷に薬を塗るつもりのようで、しのぶさんの話をとても熱心に聞いていた。なんなら私以上に。その様子に間違いなくしのぶさんの顔は引き攣っていた。