第6章 熱に焼かれる
無性に杏寿郎さんに会いたくなった。
今回の出来事で私と杏寿郎さんはよりお互いの事を深く知ることができたと思う。もちろんあの女性が杏寿郎さんに口付けた事は許せないし、なかったことには出来ない。それでもそれ以上に、杏寿郎さんの自分への、自分の杏寿郎さんへの、愛情を再確認することが出来た気がする。‥身体の関係も持てる様になった。愛する人との情交は身体も心も満たしてくれる(なんだか私が欲求不満みたいで聞こえが悪いが)。私にとって杏寿郎さんとの全てが生きる糧となる。
一刻も早く杏寿郎さんに会いたくて、私は煉獄家への道のりを休む事なく駆け抜けた。
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煉獄家の門を潜ると、中庭の方から杏寿郎さんの気配を感じ、私はそのまま中庭へと足を進めた。
そこにはやはり杏寿郎さんがいて、腰に手を当てこちらに背を向けていた。ほんの少し悪戯心が湧いて気配を出来るだけ消し、少しづつ杏寿郎さんに近づく。後ひと蹴りというところまで接近し、一気に距離を詰め勢いのままその腰にドンっと抱きついた。
「ただいま帰りました!杏寿郎さん、すごく会いたかったです!」
流石杏寿郎さん。私が思いっきり追突しても全くブレる様子がない。
「おかえり!ナオ!俺も君に会いたかった!」
そう言いながら全く驚く様子もなく、太陽の様な笑みを浮かべこちらを振り返る。
「突然こんなことをするとは君にしては珍しいな!何かあったのか?」
「いいえ、何もありません!ただ‥大好きな杏寿郎さんに甘えたくなってしまっただけです」
自分でもこんな行動を取るのは珍しいと思う。それでも、この内に溢れる杏寿郎さんへの愛を表現したくて堪らなかった。杏寿郎さんの背中に顔を押し当てスリスリと頬擦りする。
あぁ。私の大好きな杏寿郎さんの匂いがする。
そう幸せを1人噛み締めていた。
「よもや!かわいいことをしてくれるな!だがしかし、千寿郎の前では些か恥ずかしい!」
‥え?
私は自分の耳を疑った。杏寿郎さん今、"千寿郎の前"って言わなかった?
杏寿郎さんの背中にスリスリしていた顔を上げると、相変わらず素敵な笑顔が私を見つめている。あぁ素敵。違う、そうじゃない。私は‥聞かなくてはならない。
「杏寿郎さん‥今、千寿郎さんがどうのって‥」
「む?千寿郎か?千寿郎ならそこにいるだろう」