第6章 熱に焼かれる
「その後は嘘の様に大人しくなって、黙って私達に着いて店に戻っていきました。本当いい気味です!」
杏寿郎さんがそんな風に怒るなんて‥信じられない。杏寿郎さんはいつも私が嫉妬してしまうほど女性に優しい(いや、実際のところ性別に関わらず誰にでも優しいのだがどうしても異性だと目についてしまう)。だからあまり視界に入れない様に事後処理に専念していた部分も実はある。それなのにだ。でも目の前の彼女が嘘をつく様には見えない‥ので真実なのであろう。
「噂には聞いていましたが柏木さん、本当に炎柱様から愛されているんですね」
そう嬉しそうに言った彼女の"噂"という言葉が気になった。確か村田さんも噂がどうのこうのと言っていたはず。
「あの、その"噂"ってなんなんですか?」
私のその質問に、彼女は目元だけでもわかるくらいに悪戯な笑顔を浮かべている。
「柏木さん聞いたことないんですか?炎柱とその継子の噂」
炎柱とその継子。明らかに杏寿郎さんと私だ。
「私‥噂があること自体初耳なんですが‥」
「そうなんですか?結構有名ですよ」
あっけらかんと答える彼女にいったいどんな噂なのかと一抹の不安を覚える。
「『炎柱は継子を溺愛している。少しでも継子に手を出すそぶりを見せれば即、目だけで殺される』ですよ」
ふふっと嬉しそうに笑う彼女。
その内容に私は一瞬で赤面した。
「き‥杏寿郎さんは‥そんな‥私みたいに‥嫉妬したりは‥しないと思います‥」
「わぁ!柏木さん、普段は炎柱様のことそう呼んでらっしゃるんですね!」
あぁだめだ。どんどん墓穴を掘って行く。公私混同は好きではない。だから基本的には任務中は以前同様、師範と呼ぶようにしていた。杏寿郎さんはあまり気にする質ではないようで普段通りナオと呼んでいたが。
「たまに任務をご一緒しても、炎柱様は柏木さん好き!って感じが明らかに出ていたのでわかりやすかったのですが、やはり柏木さんも同じだったんですね!嫉妬されて喜んじゃうなんて‥柏木さんかわいいですね」
「‥もう‥勘弁して下さい‥」
炎柱の継子、柏木ナオという仮面が剥がれ落ちてしまった。
そんなこんなで事後処理を終え、彼女は別れ際「お二人を心より応援しています」と言って去って行った。