第9章 弱虫 × 強虫
教室に戻ると、机に突っ伏す大野くん。
声を掛けても顔を上げない。
それに気づいた和也がこちらへやって来る
「どーしたんすか」
「別に」
「ちょっとー、やめなよ。
なんか元カノとあったみたいなの、大野くん」
ふーん、と和也が頷く。
突っ伏す大野くんの肩をトントン、と叩き
「起きてますかあ」
と声を掛けると眠そうに起き上がる
私達にも気づいたのか、
目をパチクリさせて驚いていた
「どうしたの、みんなして」
「面倒な言い回し嫌いなんで、
単刀直入に聞きますけど。」
「…んー?」
「元カノとさっき廊下でありました?」
なんだよ、知ってんじゃんこいつ
「あったよ。あんだけ騒がれたら気になるよね」
あはは、と笑う大野くん。
先ほどの笑顔とは違う、
本物の笑顔だ
なんか、変な違和感。
「最近、ああやってしつこいんだよね
だから一人になんないようにしてたんだけど
好きじゃないのになあ。」
大野くんは悲しそうな目をした
彼女と何があったのかは分からない
きっと辛いことかもしれない
でも、大野くんはまた優しい笑顔を見せる
震える拳にギュッと力を込めていた