第6章 喧嘩 × 気持ち
わざと冗談っぽく言ってみる。
「まさか、彼女ですか?」
「そのまさかの彼女です」
ドヤ顔の鳴海先生の顔に、
分厚い本をぐりぐり押し付ける。
なんか、ムカつくんですけど!
「あたたたたっ、痛いよ!」
「…うっさいハゲ。」
この気持ちがいつか、
鳴海先生へ届くのなら。
私はその時どんな反応をすればいいのだろう
鳴海先生と一緒に居られて嬉しいのに
なのに、なのに
ズキズキして泣きそうになる。
「ハゲてないし!
てか先生、これでも21!ねぇ、聞いてる?!」
俯いて、鳴海先生の声が途絶えて気づいた。
ポタポタと流れ落ちる涙。
頬を伝う、涙。
「ど、どったの!?愛里ちゃん!!」
「…な、なんでもっ……」
好きって、ツライよ。
片思いはこんなにツラいんだね。
止まって欲しいのに。
何度拭っても涙は流れ落ちてくる。
これじゃあ、ただの構ってちゃんだよ。
「…トイレ」
ガタッ、と立ち上がり
出て行こうとすると
パシッと腕を握って引き止められた。
「…あ、えっと……」
鳴海先生はあたふたし始めた。
どうやら無意識らしい
「俺、なんかした?…かな」
ヘラヘラと笑わないで。
優しく握ってくれるその手が、
私の気持ちをさらに苦しめるの。
なんで引き止めたの。
どーして鳴海先生まで泣きそうなの。
「…どーしてッッ」
期待なんてさせるようなこと、するんですか