第6章 喧嘩 × 気持ち
ギュッと、拳に力を込める。
Plulululu....
携帯が着信を告げる。
鳴海先生は慌てて「はいはい、出ますよー」と
呟いて携帯を開いた。
真横で何やら会話をしているなかで、
どうしたらいいものか、考えた
このまんま帰ってしまおうか。
「すぐ帰るよ。うん、分かった。
いま?生徒と一緒なの、切るよ、はーい」
電話の相手は彼女さん。
鳴海先生は立ち尽くした私に視線を向け、
またヘラ、と笑った。
なんなのその笑み。
ほんとにムカつくんだけど
「…俺も泣きそう……」
急にそう言い、うずくまった。
意味はよく分からないが、
鳴海先生は本当に泣きそうみたいで
うずくまってから顔を上げない。
声なんてかけてやれない。
もしも彼女さんの事だとしても。
仕事に関することだとしても。
私は本当に部外者なのだから
「…先生さぁ、ダメな男なんだよ…」
「ど、どうしたんですか…」
と聞かれたかったのか。
「彼女、ね。
どうやら先生を騙してるらしい」
へえ…、
鳴海先生なんか騙しても
得るものなんてないと思うけど…
と思ってしまった私。
思わず罰として頬をつねった。
「と、とりあえず座りましょう…か。」
なになに。
私より泣きそうってなんなの!
慰める立場、逆転してるよ!?