【MARVEL】This is my selfishness
第7章 7th
『お酒は出来たらわたしが運ぶから、ソファー席に行ってて大丈夫だよ』
胸の痛みを誤魔化すようにそう絞り出すと、バッキーの眉尻が少し下がったような気がした。が、そのまま「わかった」と呟いてケリーさんに連れられ、ソファー席へと向かった。
「ミアちゃん、良かったの?」
『何がですか?』
「色男さん、ケリーと行かせて」
『わたしが決めることじゃないですから』
バッキーはあの時、考えとくって言ってたし、ハッキリと断ってなかったもの。それにケリーさんはバッキーとお喋りしたいって言っていたし、お互いが嫌な訳じゃないなら、別にわたしがその選択の背中を押したって構わないはず。
わたしの返事を聞いてロンさんは「そーお?」と言いながら、お酒の準備をしに行った。
「今度は君の方が大丈夫じゃなさそう」
近くで片付けをしていたアレックスが隣に来る。
「あの人が強面で甘いマスクのセキュリティさん?同じアパートの」
『うん、そう。セキュリティさんっていうか、隣人でお友達』
「ふぅ〜ん」
気のない返事をしたかと思うと「そうだ!」と空気を変えるようなトーンでアレックスが「今度は僕の番だ」と言った。
何が?と思っていると、「催眠術、かかってみない?」と言われた。
『催眠術?』
「うん。ミアは動物とかだと何が好き?」
『う〜ん…猫かな?』
「猫だね?じゃあ、僕に集中して」
そう言ったアレックスはポケットから指輪を取り出し、それを左手の人差し指に着けて右手の人差し指と親指でスルスルゆっくりと指輪を回すように撫で始めた。
「ミアはだんだん猫にな〜る…ミアはだんだん猫にな〜る…」
『ふふ、何それ?』
「僕に集中してったら」
言っててちょっと恥ずかしくなったのか、アレックスがいじけたように口を突き出してわたしを咎めた。
『ごめん』と言って、再度、アレックスに集中してみる。
と、そこでロンさんに呼ばれた。
「お酒、運んでくれる?」
『はい!アレックス、ちょっと待ってて』
バッキーのお酒を運ぶため、アレックスに待ってもらい、ケリーさんとバッキーが座るソファーへ向かう。