【MARVEL】This is my selfishness
第6章 6th
玄関を出ると、バッキーが壁に左肩を預けるようにして立っていた。そこにいるとは思わず、少し体が跳ねた。
わたしが驚いたことに気付いてか、少し笑われた。
「やっぱり君はオシャレだな」
『ありがとう』
ストレートに褒めてくれるバッキーにどうしても照れてしまう。
そう言うバッキーも先程までと違って、いつものクラシックなスタイルになっていた。
手には黒い手袋をしている。
『バッキーもそういう格好似合うよね』
フェイクレザーのジャケットやライダースジャケットはもちろん、フードのついたTシャツにシックな色合いのジャケットも似合う。
素直に『かっこいい』と言うと、照れているのかむず痒そうな顔をした。珍しい。
そして照れ隠しのように「行こう」とわたしの腰に少しだけ手を添えて階段の方へと歩みを進めた。
お昼時を少し過ぎているせいか、どのお店もそんなに人が多くなく、待つことなく席に着くことが出来た。
それぞれの注文をして料理を待っていると、わたしの後方から来た女性がバッキーに声をかけた。
「Hi、昼間に会うなんて」
自然と彼の肩に触れたのはケリーさんだった。
いつもお店で見るような格好ではないけれど、大人の女性らしさを纏った服装をしている。綺麗な人は私服まで綺麗。
そんなケリーさんに対して、バッキーは特に驚く訳でもなく、「Hi」と返すだけだった。
そしてケリーさんは、今わたしに気付いたのか、「あら、あなたもいたのね」と微笑んだ。
『こんにちは』
「アパートが同じとはいえ、いつも一緒なのかしら?」
「いつもじゃないが、今日は朝から一緒なんだ」
バッキーがわたしを見つめながらケリーさんに答えた。
「朝から?羨ましいわね。私も同じアパートに引っ越そうかしら」
…前から薄々思っていたんだけど、もしかしてケリーさんってバッキーに気があるのかな…?
バッキーを見る時の目がわたしを見る時と違う。かと言って指名のお客さんを相手にしている目とも違う気もするし…
するとバッキーが乾いた笑い声を上げた。