【MARVEL】This is my selfishness
第6章 6th
「─────」
誰かに呼ばれた気がして、意識が浮上する。
ゆっくりと目を開けると、そこには空や景色ではなく──────
「起きたか?」
バッキーの胸板だった。
っ?!?!
咄嗟に体を勢いよく起こす。そのせいで脳がぐらりと揺れ、目眩がした。
見間違いじゃなかったら、バッキーが片腕を伸ばしていた気がする…そしてわたしは今そこから体を起こした……ってことは…
『も、もしかして、わたし、バッキーの腕を枕に…?』
眠るバッキーの横に寝転んだのは覚えているけど、その時は腕は伸びていなかったし、そもそも人の腕を枕にするなんていう技術(?)、わたしは持ち合わせていない。
「いや、俺が勝手にやったんだ。クッションは俺が使ってたから地面が痛いだろうと思ってな」
眠れたのが良かったのか、バッキーは少し顔色が良くなった気がする。
『あ、ありがとう…大丈夫?痺れたりしてない?』
「全然」
目尻にシワを作るような、いつもの笑い方に、ホッとする。
『少しは眠れた?』
「ああ、おかげさまで」
ポフポフ、とクッションを触る。
…もしかして…
『部屋にクッションがないのが問題なんじゃない?』
わたしがそう言うと、バッキーは片眉を上げて「え?」というような顔をする。
『硬いところは慣れてる、みたいなこと言ってたけどやっぱりクッションとか枕は必要だと思うよ』
無いから悪夢を見るんじゃない?と付け加えると、バッキーは少し考え込むような仕草をした。
「いや。クッションの問題じゃない」
『?じゃあ何?』
そう聞くとバッキーは答えにくそうに視線を泳がせる。
バッキーが言い淀むなんて珍しいかも…。
「……このクッション、貰ってもいいか?」
『……え??』
まっ、えっ?
わたしのクッションを両腕で抱えるようにして、ポフ、と顎を乗せながら上目遣いでわたしを見てくる。
ひぃ、可愛い…
普段のバッキーからは想像できない可愛さを見せてくる。
『でっ、も、それ、わたしが使ってたやつで…新品じゃないよ?』
ヨダレはさすがに垂らしてないと思うけど、今まで普通にわたしが使ってた物だし…それを渡すのは申し訳ないんだけど…