【MARVEL】This is my selfishness
第6章 6th
───────驚いた
自分は眠りが浅い方だと自負しているはずなのに、ミアがヨガをしてる横で寝るとは思わなかった。
ミアのクッションを借りたことも効果があったのかもしれない。
自分の部屋にもクッションのひとつくらいはあるが、ミアの匂いがついた物の方が悪夢を見ない気がして、心苦しくも嘘をついてミアのクッションを借りた。
何の夢も見なかった。
そして今。
ハッと目を開け、覚醒した俺の横にはヨガをしていたはずのミアが横たわっている。
よくよく顔を見れば眠っているようだが、眉間にシワが寄っている。
『ん〜…』
少し呻きを零しながら、しっくり来ないのかモゾモゾと動く。
…もしかして地面が硬くて体が痛いのか?
試しに起きるかもしれないと思いながらも自分の腕をミアの首の下に差し込んでみる。
すると、眉間のシワがなくなり、俺の腕を確かめるように触れたまま、満足そうな表情になった。
…先程色のついた声を上げた人物とは思えないほど無垢な寝顔。
正直言って、自分が発端とはいえ、不意打ちであんな声を出されるのは随分下半身に堪える。
くすぐったがりなんだろうとは思ったがまさか艶やかな声が出るとは思っていなかった。
下から眺めていたミアの表情は普段の彼女からは想像できないほどにソソられるものだった。
どんどんミアにハマっていっているのを確実に実感するのと同時に罪の意識に苛まれる。
多くの人生を奪っておきながら、自分が幸せを感じていいのかと。
安穏を求めていいのかと。
恩赦された身。
ウィンターソルジャーとしてやったことは洗脳されていたからであって俺自身が悪い訳じゃないと言われる。
それは俺の心を軽くも重くもする。
どう足掻いたところであれは俺がやったことなのだ。
洗脳されていたとは言え、俺がやったことなのだ。
記憶だってある。
殺す、その時の記憶は消えない。
消していいものでもないのだろう。人の命を奪っておきながら消していいわけが無い。
…それでも、ミアと過ごす今だけは、忘れていたい。
都合のいいことだとは分かってる。
俺とは切り離せない記憶だって分かっている。
───────そんなことを隠して彼女のそばにいていいはずがないことも。