【MARVEL】This is my selfishness
第6章 6th
「香水…じゃないな」
『ん、』
首元に気のせいかと思うほど、軽くバッキーの鼻が当たって、そのくすぐったさに鼻を抜けるように声が漏れる。
サッとバッキーが少し離れた。
『最近、ロンさんがオススメしてくれたボディオイルとかを塗ってて…多分それだと思う…』
「…そうか…。いい匂いだな。元の匂いも好きだが」
言葉の最後の方が小さくてよく聞こえなくて聞き返すも、バッキーは「何でもない」と誤魔化すようにして言い直してはくれなかった。
「ほら、ヨガするんだろ?」
『あ、うん』
シートを敷いて、バッキーを招く。大きいシートだからわたしがヨガをしてもバッキーのスペースは十分にある。
バッキーはシートの上にわたしの方を見るように横になると、頭と腕でクッションを挟むような体勢になった。
『…こっち見るの?』
「言ったろ?君がしてるのを見てたら寝れそうだって。それに面白そうだ」
『面白そうって…』
ヨガの本を開いて、どのポーズからいこうかと眺める。
『ねじった頭を膝につけるポーズ……』
本を見ながらポーズを真似していると、その本をバッキーが取った。
『あ、ちょっと』
「もう少し鼠径部に足くっつけて」
『鼠径部…わひゃっ!』
バッキーに脚の付け根を指でつつかれたのがくすぐったくて後ろにバランスを崩した。
「大丈夫か?」と言いながら笑ってるバッキーに仕返しのつもりで脇をくすぐる────が、全く効かなかった。
『くすぐったくないの?』
「ああ、全く。早く退かないと…」
起き上がった勢いでくすぐりに行ったせいで、今のわたしは寝転ぶバッキーに上半身だけかぶさるような体勢になっている。
その状態で、ツー…とバッキーの指が体の横のラインを走る。
『んっ』
くすぐったさを逃そうと反射的に体が跳ね上がって捩れる。
『ふっう、や、め』
バッキーの上から退こうにも体に上手く力を入れれない。
もうダメ、と体が崩れ落ちそうになった時─────バッキーのくすぐり攻撃が止んだ。
『ふあ、?』
視線を下げると、下からバッキーがじっとわたしを見ていた。
その目をくすぐったさに痺れた頭のままぼんやりと見つめ返すと、バッキーが軽く上体を起こす。