【MARVEL】This is my selfishness
第6章 6th
その瞬間、ボッと顔が熱くなる。
「じゃあな。あんたも夜道に気をつけて」
バッキーはケリーさんにそう言うと、わたしの左手を握ったまま歩き出した。それにつられてわたしもぎこちなく足を踏み出す。
通りに出てからも手は離されることなく、繋がれたままだった。
…バッキーは何を考えて、今手を繋いでるんだろう…。
こないだは冷え性の話からこうなったけど…
「俺がいない間、何も無かったか?」
『え?あ、うん…特に何も…。あ、新しいバーテンダーさんが入ったくらいかな』
「へえ。男?女?」
『男の人。そういうバッキーは?怪我、してない?』
バッキーが「してない」と答えながら何かに気付いたように、辺りを見渡し始める。
『どうかし────っ!』
バッキーとわたしの視線は恐らく同じ所で止まった。
荒い息遣いと肌と肌がぶつかり合う音が聞こえる、街灯に少し照らされて見えるその路地裏には───────
「野外でか…最近の奴は凄いな」
ポツリとバッキーが感心したように呟いた。
その呟きが聞こえたのか、気配なのか、お互いに夢中なその男女の男性の方がこちらを見た。
しかし行為を止めることはなく、むしろ見せつけるかのように女性を抱え直し、より激しく動き出す。
あまりの光景に絶句して立ち止まってしまっていたことに気付いて、同じようにその光景を見ているバッキーの腕に抱き着くようにして急ぎ足でその場を去る。
な、何あれ…!
何で外であんなっ!
見なかったことにしたいのに、あの光景が脳に焼き付いて離れない。
多分時間帯からしていつもあの辺りを歩いているカップルさんだと思う。
今までも建物の出入口の階段の所等でイチャイチャしているのを見たことはあったけど、あんな事まではしてなかった。
アパートのエントランスに着く頃には息が上がっていた。
かなりの急ぎ足で来たのもあるけど、あまりの衝撃に緊張していたのもあった。
…何より顔が熱い。
「大丈夫か?」
バッキーの声にハッとして、更にバッキーの腕に抱き着き自分の腕を巻き付かせるようにしていたことに驚き、急いで離れた。
『だっ、大丈夫!』
いや、全然大丈夫じゃない。