【MARVEL】This is my selfishness
第6章 6th
「Hi」
『っ、ば、バッキー…!』
人が近づいてきた気配がなかったから声が出ないくらい驚いた。
『び、びっくりした…』
心臓がバクバクと音を立てるのを抑えるように胸に手を当てる。
「驚かそうとは思っていたが」
肩をすくめて悪戯っ子のように笑うバッキーを見ると、メッセージや電話でやり取りをしていたけど『本当にバッキーだ』という気持ちが溢れて体が動いた。
『おかえり!』
「っ!」
思わずバッキーに抱き着くと、今度はバッキーが体を固くした。
その硬直にサァッーとわたしの血の気が引く。
────しまった…!つい!
バッと離れる。
『ご、ごめん!』
「…いや…」
バッキーも困惑しているのか少し気まずい沈黙が流れる。
「あー…そろそろ仕事終わるかと思って来たんだが…」
後頭部を掻きながらバッキーが言う。
『あっ、えっとね、ゴミ出ししたら上がって良いって言われたからもう帰れるよ』
「じゃあここで待ってる」
どうやらわざわざ迎えに来てくれたらしい。
バッキーもこっちに戻ってきてそんなに時間経ってないだろうに……
そう思うとまた胸がぎゅう、と苦しくなった。
嬉しさに喉が詰まる。
『すぐ準備してくるね!』
バタバタと裏口から店内へ戻り、ロンさんにゴミ出しが完了したから帰るという旨を急いで伝えて、アレックスにも声を掛けて、鞄をロッカーから取りだし上着を着ながら、バッキーが待つ裏口へと急ぐ。
裏口の扉へと辿り着くと後ろから足音が聞こえた。
振り返るとそこにはケリーさん。
『お疲れ様です』
「お疲れ様」
扉を開けて先を譲る。
そのまま出るかと思ったら、ケリーさんが出てすぐの所で止まった。
「あら、貴方…」
ケリーさん越しに見ると、近くで待っていたバッキーに気付いたらしい。
「Hi」
「この子を待ってたのね」
そう言ってケリーさんがわたしの姿がバッキーに見えるように1歩隣にズレた。
「ああ」
バッキーは口角を上げてわたしを確認すると頷いた。
「帰ろう」
バッキーはわたしに右手を差し出しながら近づく。
どういう意味で?と思いその手を眺めていると、わたしの左手を握った。