【MARVEL】This is my selfishness
第6章 6th
電話を切ると、そのままベッドに倒れ込んだ。
ぎゅう、と胸が締め付けられる。
…心配、してくれたのかな…心配させてしまったのは心苦しいんだけど、今感じてるこの胸が締め付けられるような苦しさはそれじゃない。
この苦しさはきっと、バッキーが電話をしてくれて、わたしの為に出来るだけ早く帰るって、わたしの声が聴けて良かったって…それが嬉しいからだ。
声が聴けて嬉しいのはわたしだけじゃないんだ。
それがすごく嬉しくて、胸が高鳴って、苦しくなる。
「ミアか?」
電話を切ると、サムがコーヒーを持ってミーティングルームに入ってきた。
何故わかった?と言おうとしたが、これほど簡単な問題もないだろう。
「カウンセリングの先生や俺以外で電話する相手ってなるとミアしかいないよな。それに顔が違う」
指をさしてきながら、コーヒーがテーブルに置かれた。どうやら俺の分らしい。
「顔が違うって何だ」
「おいおい。自覚なしか?そんなわけないだろ?」
サムの言う通り、自覚はある。
ミアと話すと自然と顔が綻ぶ。それは電話越しでも変わらないようだ。
「ミア、どうかしたのか?」
「…いや、何も…」
これ以上揶揄われるのも癪だから、適当に流すと、「分かってるぞ」とでも言うような目をされた。
たったの1日でもミアに会いたい気持ちが募っている。
前も数日、家に戻れないことがあったが、その時はここまでじゃなかったし、何よりミアが「寂しい」と言うこともなかった。
違う点と言えば、今回は先に「数日家を空ける」というのを伝えていたということだろう。
恐らくそのせいでアパートに1人だということをはっきり自覚して寂しくなったんだろうが…
─────電話して良かった
不思議なもので、声を聴くと安心したのに、声を聴いたせいでさらに家に帰りたい気分になった。
ただ1つ不満を言うとしたら…
「なんだ?」
ミアがサムのことまで気にしていたことだな。
不満そうに見られたことに気付いたのか、サムが怪訝そうな顔をしている。
ミアにとっては俺もサムも同じくらいの存在感なのだろうか。