【MARVEL】This is my selfishness
第6章 6th
建物からは黒煙が立ち込み、侵入する前よりも倒壊していた。
これでは当分、中に入れないし、それどころか入れたとしても何らかの痕跡を見つけるのは難しそうだ。
そもそも相手の狙いが分からない以上、何を痕跡として探すかも曖昧だ。
「どうする」
〈タイミングが良すぎる。まだ近くでこちらの様子を見ているかもしれない。警戒しながら一旦戻ろう〉
「わかった」
恐らく予め爆弾を仕掛けていたのだろうが、それを俺達が建物内に入るのを見てから起爆させたのか、もしくは建物に入る前でも入った後すぐでも良いようにタイマーを設置していたのか…
何を見つけてサムが撤退令を出したかはまだ分からないが、今はとりあえず乗ってきたクインジェットに戻るしかない。
爆発させたということは、俺たちを敵とみなしたかもしれない───────
バッキーから数日家を空けるというメッセージに
〈お仕事?怪我に気をつけてね。頑張って〉
と送って仕事に戻ってから、その後は返事はなかった。
翌日起きてからスマホを確認すると、返信が来ていた。
〈怪我なんてヘマしない。ありがとう〉
と短い文だった。
───────怪我なんてヘマしないって……前、怪我してたじゃない。
きっとバッキーにとってあの程度は怪我と言わないんだろうけど。
サムさんも一緒かな?
〈サムさんも一緒なら、サムさんにも怪我に気をつけてって伝えて〉
と送ってからスマホを置いて洗濯をするために鍵を持ってランドリー室へ向かった。
バッキーに忠告された通り、鍵をちゃんと閉めて部屋を出る。
階段を降りてランドリー室に向かい、洗濯物を洗濯機に入れる。
洗剤と柔軟剤を入れてスイッチを押すと、唸るような音を出しながら洗濯機が稼働する。その音を聞きながらふとエントランスに出る。
───────そっか。今この建物にはわたししかいないのか。
その事に気付くと、途端に何だか寂しくなった。
今まで一人暮らしでも、その建物内に1人きりということはなかったし、ここでは約束したわけでもなく、よくバッキーと出くわしたりしていたし…。
ゴウン、ゴウン、と洗濯機の音だけがする。