【MARVEL】This is my selfishness
第6章 6th
レッドウィングに先導されるように建物内へ侵入するが、未だに人の気配はおろか、機械などの作動音すらも聞こえない。
壁や天井も崩れ、外の木々の根や植物が建物内にまで及んでおり、足元には瓦礫やガラスの破片、倒れたステンレス製の棚が転がっており、何も無い平坦な場所も少ない。その分隠れる場所も多いかもしれないが…。
ミアにメッセージを送ってからだいぶ経つが、送ったあとからケータイを開いていないため、返信が来てるかどうかもわからない。
ここに来るまでに時間もかかったし、既に夜が明けようとしている。
サムに会ったことで、俺が安全ではない仕事に就いていることがバレた。
少しの怪我でもまるで自分が痛いかのように、傷を心配してくれるミアに悲しい顔をさせない為にも無傷で帰らなくてはならない。
あまり怪我をしないようにしたいがそうも言ってられないのが任務だ。
少しでも早く帰ってミアの毒気が抜けるような、安穏を具現化したような笑顔を見たいが、もし怪我をしたら怪我が治るまで家には戻らないようにしようか。
〈何かの痕跡を見つけた……名称は書いていないが…何かの薬品のような…〉
無線からサムの声がした。
別方向から建物内に入った為、サムがいる方向へと向かう。
〈ッ、全員退避しろ!!!〉
突然、サムの声が焦ったものになった。
各員その無線を聞き、侵入してきた方向へ駆け出す。
先陣を切って施設に入った俺が今度は一番最後を逃げ遅れる隊員が出ないように庇いながら走る。
と、その後ろを追いかけてくるように先程までいた場所が轟音と共に爆発した。
「クソッ!」
前を走る隊員を押し出すようにして全速力で走る。
施設を出る瞬間、爆風に押されて体が浮き上がり、そのままの勢いで外へと飛ばされた。
爆音と風圧で耳鳴りがする。
音が遠くなり、耳に填めていた無線も吹き飛びこそしなかったが、聞こえづらい。
舌打ちをして無線を一旦耳から外し、耳に指を突っ込んで何とか耳鳴りが治まらないか試すと次第に音が聞こえてきた。
〈無事か?!〉
「ああ」
サムの声に周りを見渡し、負傷者がいないか、欠員がいないかを確かめて返事をする。