【MARVEL】This is my selfishness
第6章 6th
「今日は暇な方ですか?」
お客さんの波が過ぎ去り、カウンターを拭いているとログマンさんが声を掛けてきた。
『そうですね。週の半ばだから…週末にかけて忙しくなることが多いですよ。月末は何曜日だろうが忙しくなりやすいですけど』
「なるほど……あの、ラフに話してもらって大丈夫ですよ。ミラーさんの方が先輩なんだし」
『それを言ったらログマンさんこそ。中身は同い歳でも本当はわたしより6歳上なんですから』
お互いにラフに話していいと理由をつけあってることがなんだか可笑しくてつい笑うと、ログマンさんも笑った。
「アレックスって呼んでもらえる?」
『わかった。じゃあ、わたしのこともミアって』
「わかった」
ニコニコと笑う彼は確かに年齢が近い感じがした。雰囲気が柔らかい感じがする。
「2人とも、もう仲良くなれそうなの?」
お客さんの注文が無いのか、グラスを拭きながらロンさんが会話に交じる。
『アレックスが人懐っこいんだと思います』
「いや、ミアが話しかけやすそうな雰囲気があるから」
「仲良しね。でも気をつけなさい?アレックス」
「何を?」
首を傾げるアレックスにロンさんがわたしに聞こえるように耳打ちする。
「ミアちゃんには強面で甘いマスクのセキュリティがついてるわよ」
「え?彼氏?」
アレックスが目を丸くしてわたしを見る。
『ロンさん!?彼は隣人で友達なだけですってば!アレックスも!彼氏じゃないから!』
彼氏、という単語に顔が赤くなる。
バッキーにそんな対象として見られてないし、わたしもそういうつもりじゃない…勘違いしそうになることは多々あるけど。
「向こうはどうかしらねぇ」と意味深長な顔をするロンさんにアレックスは「どんな人?」と興味津々。
『ほら、お客さん来ましたよ!』
タイミング良く、お客さんが来たので2人に小声で知らせて、バッキーについての話が深掘りされる前にお客さんへと意識を向けさせた。
フフ、とロンさんにウィンクされたのが、まるでわたしの心を見透かされていたようでまた恥ずかしくなる。
───────この時、わたしに向けられた別の視線があったなんて、気づかなかった───────