【MARVEL】This is my selfishness
第2章 2nd
「…大丈夫か?」
目の前の顔から耳まで真っ赤にした女の子に再度声をかける。
掴んでいる腕まで熱くなってきた。
『だ、大丈夫だから!』
一向にこっちを見ようとしない。左腕を見たのだろうか、と思ったが、義手は扉の影になっていてミアからは見えていなさそうだ。
反応からして恐らく俺が服を着ていないからだろう。
先ほど帰ってきてすぐシャワーに入っていて、その最中にベルが鳴った。
「じゃあ後でそっち行くから待っててくれるか?」
『分かった!!!』
威勢よく返事をしてもらえたので掴んでいた腕をするりと離してやると、猛スピードで隣の部屋に戻っていった。
『風邪ひかないようにね!』という言葉と共に部屋の中へと消えていった。
クク、とバッキーは喉を鳴らすように笑った。
強化人間になる前にはいろんな女と関係を持った。
けれどそのどの女とも違うミアの反応はバッキーにとっては新鮮に思えた。
自分が今まで声をかけてきた女は皆、気の強そうな女だったり、そういった事に慣れているような女が多かったように思う。
その方が後腐れもなかったし、お互いそれを望んでいた。
本気になったことがなかったのだろう。本気だと思っていてもいざ振られた時だって特に心に残っていなかった。
まだ出会って数日だが、今まであまり接したことのないタイプのミアにバッキーは少し心を躍らせていた。
自分が許されることはないと思っていても、少しだけ前を向けるようになっていることに自分自身、気づいていた。
み、見ちゃった…左半身はドアの影になってたけど、それだけでも十分、『見ちゃった!』と思った。
駆け落ちしたらしい両親が亡くなってからというもの、2年間だけ孤児院で厄介になり、その後は住み込みのバイトから始めて一人で生きてきた。親戚がいるのか、そもそもどこにいるのかも分からなかったし、頼ろうという気にもならなくて、生きることに精一杯力を注いできた。
生きることに必死だったのと、周りの人みたいに『誰が好き』とか『結婚したい』という気持ちもなかったから、そういった経験がなかった。
経験がなかったが故に、あの反応だった。