【MARVEL】This is my selfishness
第4章 4th
『お疲れ様でした』
「お疲れ様〜!気をつけて帰るのよ?」
『はい!ありがとうございます』
裏口から出ると空はまだ暗く、真夜中にネオンがちらほら光っているだけだった。
こんな時間に出歩くのは初めて。
夜中の2時に閉店し、少し店内を掃除して帰る訳だが、想像してたよりも暗く、少しだけ恐怖心が出てくる。……思ったよりこんな中帰るの怖いな…。
早歩きでアパートに向かう。
一応手にスプレーを持っとこう。
無事何事もなく(途中カップルの話し声にびっくりして飛び上がったけど)アパートに着いた。
エントランスの扉をなるべく静かに開ける。元々音が大きいわけじゃないけど夜中でバッキーも寝てるかもしれないことを考えると静かに行動しようと思う。
どう静かに足を運んだって軋む階段に若干焦りながら上りきると、ここからが難関だ。
なんて言ったってバッキーの部屋の前を通るのだから。
…わたしこれ仕事の日毎回するの?いや、まあいいけどさ…。
ゆっくりゆっくり足を進めてなるべく音を立てないように鍵を取りだし、差し込みから解錠まで音を立てないように心がける───────
「Hey」
『わひゃっ!!!!』
大きな音を立てて解錠後、鍵も落とした。
心臓が痛いくらい騒ぐ。
声のした方を見るとバッキーが玄関から顔を出してこちらを見ていた。
全身は出てきてないけれど、見えている肩や腕からして服を着ていなさそうだ。
「クッ、フ」
『ちょっと!笑いを堪えれてないですけど?』
「良いリアクションだった」
肩を揺らしながらくつくつと笑うバッキーに余計心臓の音が煩くなる。
『…ごめん、起こしちゃった?』
「いや、元々そんなに眠りが深くないんだ。特に君の帰りが気がかりでね」
眉尻を下げて優しい顔をするバッキー。そういうのがずるいんだ。
この人、顔がずるい。
『う、尚更ごめんなさい…』
「今度から音を気にしなくていい。君の足音とか聞こえた方が帰ってきたってのがわかって安心できるから」
『…わかった…ありがとう』
優しく微笑むバッキーには敵わないけど、わたしなりの感謝を込めて微笑み返した。