【MARVEL】This is my selfishness
第3章 3rd
自分だから心配してもらえてる、なんて間違った心構えをしてしまっていたんだ。
心配してもらえるのは嬉しいと思っていた。それだけで充分、幸せなことのはず。自分だから心配してもらえてるなんていうのは『それ以上』を求めてる。
心構えを、認識を間違っては駄目。
『そうだよね、自分の隣人が何かトラブルに巻き込まれたら寝覚め悪いもんね』
「っ、」
わたしがボソリと言った言葉に何か反応をしてくれようとしたバッキー、けれどちょうどアパートに着いたこともあって、その言葉を遮るようにわたしはエントランスのドアを開けた。
乾燥機が止まったのだろう、ランドリー室からは何も音がしなかった。
少し二人の間に沈黙が流れる。
「ミア、」
『乾燥機、終わってるね』
何もないのに、心が落ち着かない。何も無いからこそかもしれない。
ソワソワしてバッキーの言葉を先程から続けさせないようにしていることには気づいてる。
ランドリー室に入り、乾燥機を開ける。
…しまった…ランドリーバッグは持って上がったから洗濯物を入れるバッグがない。下着も入ってるのに……
そう思ったけど、先程のことが頭を過ぎる。
……どうせわたしは女性の1人でしかない。わたしの下着を見ようが見まいが、バッキーは何も思わない。
下着以外の服で下着を包むようにして乾燥機から出して抱える。
『ごめん、もう少しスプレー持っててもらってもいい?』
わたしより服が少なそうなバッキーの顔を見ずに、早口で言った。
「ああ」
顔を見ないようにしてるせいで、今バッキーがどんな顔でわたしを見ているかわからない。
早足でランドリー室を出て階段を駆け上がる。後ろからバッキーも階段を上ってきている音がする。
鍵を開けてベッドの上に乾いた洗濯物を置いて、玄関先にいるバッキーの元へ駆け寄った。
『ありがと。これ、スプレーのお金』
「いや、だから、」
『やっぱり自分が使うものを人に全額支払ってもらうのは申し訳ないから。今日はありがとう。一緒に行ってくれて心強かったよ。じゃあね』
何か言葉を挟まれる前に、逃げるように早口でまくし立てて扉を閉めた。最後までバッキーの顔は見ずに。