【MARVEL】This is my selfishness
第3章 3rd
思えばスタンガンを任務以外で持ったことがなかった。
任務中もナイフや拳銃など殺傷能力のある武器が多かったが。
だからスタンガンの所持が出来ないなんてことを知る由もなかった。
どうしたものかと焦っている横でミアは呑気なもんだし。
そもそも明らかにミアが関わったことのなさそうな店員に何の物怖じもせず向かっていくとは思わなかった。
抜けていると思いきや、割と肝が据わっているというか…そこまで考えていないのか。
パンチは弱いし。
いくら店とはいえなんだ?俺相手に本気のパンチなんて出来るわけない??誰に言ってるんだ?
なんだあのへなちょこパンチは。不安にしかならなかったぞ。
ミアがレジに向かう際も店員にミアが1人ではなく自分を連れ立っているということを認識させるために常に睨みを利かせていた。
隙を見せればミアを口説き丸め込まれると思った。
いくら今まで関わった女と種類が違うとはいえ、ただの『お隣さん』に何故ここまで……と自分でも思う。
ミア本人にどう思われてることか。
会計は俺が出した。
ミアが使うものとはいえ、対策をするように強く勧めたのは自分だ。金を女性に出させるのも荷物を持たせるのも自分の流儀に沿わなかった。ただそれだけだ、と言い聞かせた。
『あの、バッキー?』
「なんだ?」
『スプレーの代金…』
お店を出てからもバッキーはスプレー缶の入った袋を持ったままで、また一瞬わたしの腰を支えて道路側を自分が歩くようにしてくれた。
しかしその紳士的な行動に段々と申し訳なさを感じてきた。いくら心配性とはいえ、ただのアパートの隣人に優しくしすぎでは?と。
「言い出したのは俺だ。使うのは君でも使わせるように仕向けたのは俺」
『仕向けただなんて!』
そんな悪い言い方しなくても…
「女の子が夜遅くに出歩くのは心配だ。しかもそれが自分の住んでいるアパートの隣人だなんて。みすみす見逃してたら何かあった時、俺が後悔するだろ?」
その言葉が無性に刺さった。
…そっか……バッキーはわたしに特別心配性を発揮している訳じゃなくて、女性全員に紳士的で優しいんだ。
分かっていたはずなのに、いつの間にか少し心構えが変わっていたみたい。