【MARVEL】This is my selfishness
第3章 3rd
『わたしがいればって?』
「…なんというか…君は」
『?』
何か言葉を選ぶような、言葉を詰まらせている。
「押せば…やり込めるというか…」
『…うん?』
押せばやり込める?チョロい的な?
「体術なんて出来ないだろ?ちょっとここにパンチしてみろ」
そう言って右の手のひらを見せてきた。
そう言われて全力でパンチなんて出来るわけないんだけど……お店の中だし……。
ペチン、と軽い音を立てながらグーパンチしてみる。
「本気か?」
そんな正気を疑うような目をされても…
『バッキー相手に本気でパンチ出来るわけないじゃん…お店の中だし』
「やっぱりスタンガン『も〜!催涙スプレーだけで良いから早く買って帰ろ!』
バッキーの言葉を遮って催涙スプレーを数種類持つ。もちろんニンニク臭のスプレーも入れて。
『きっと乾燥機も終わってるよ』
不満そうな雰囲気を後ろに感じながら先程スタンガンの所持について教えてくれた店員さんの元へお会計に行く。
スプレーを数本、台に置いてお財布を取り出していると店員さんがチラチラとわたしより上の方を気にしているように見えた。
その視線を辿ると後ろで何故か店員さんを睨みつけているバッキーがいた。
『…?』
なんで?と思いつつ、店員さんが合計金額を言ったのでそちらに視線を戻す。
お金を支払おうとするとわたしの右横から腕が伸びてきて、わたしよりも先に代金をレジ台に置いてしまった。
『ちょ、』
理解する時には既に店員さんもその代金を手に取りレジに入れてしまっていた。その代金は誰であろうバッキーが置いたものだった。
そして思ったよりもバッキーが近くて焦った。
後ろを振り返るどころか見上げればすぐ視界にいるような距離。
そういえば今右横から伸びてきた腕は右腕だった気がする……どうりで背中に人の気配を感じるわけだ。
カツンカツン音を立てながら店員さんが袋にスプレー缶を入れてわたしに渡そうとすると、それをバッキーが横から受け取る。
……確かにバッキーが支払ったものだけど、それが必要なのわたしなんだけど……。