【MARVEL】This is my selfishness
第3章 3rd
「手当り次第か。俺に任せてくれるか?」
黒い手袋をはめた手をズボンのポケットにつっこみながら辺りを見渡すバッキー。それだけの仕草でも様になるな〜と思っていると、つっこんだばかりの手をわたしの顔の前でひらひらと動かす。ぼんやりそれを眺めてからいつの間にかわたしに視線を合わせてくれていたバッキーの瞳に照準をあわせた。
「聞いてるか?」
『あ、ごめん、聞いて…る』
「聞いてなかっただろ」
眉尻を下げた表情も優しく感じる。
「何ヶ所か思いつく店があるからそこから行ってみてもいいか?」
『うん』
じゃあ、とバッキーが歩き出すので着いていこうとするとわたしを誘導するように少しだけ腰に手が添えられた。
その手は並んで歩くようになった時には既に腰から離れていて本当に一瞬だったけれど、そういったリードももちろん初めてされたわたしはちょっとドキドキした。
案内されたお店はネオン看板以外は少し薄暗いような場所だった。
1人では入らなそうなお店で、少し腰が引けそうな、けれどちょっと冒険のようなワクワク感も抱えながらバッキーに続いて入る。その間もバッキーが扉を押さえててくれる。
『こういうお店初めて入った…』
「だろうな」
肩を竦めながらわたしを先導してお店の中を進んでいく。
キョロキョロと目移りしながら後をついて行くと、めぼしい棚を見つけたのかバッキーが立ち止まる。
「スタンガンはここら辺だな…」
『あ!バッキー見て見て!催涙スプレー!』
ほら!と見せると「それはいいから」とわたしの手を覆うようにして商品棚に戻された。
『催涙スプレーも良くない?』
「持っててもいいけどまずはこっち」
バッキーの横に並んで物々しい雰囲気で並ぶスタンガンを見る。
『せめてちっちゃいのがいいな』
「威力の強いやつ」
『…そもそもスタンガンって持ち歩いていいの?』
あー…とバッキーの口が特に言葉を発さずに開いた。
さてはそこら辺考えてなかったな…?
でもこうやって売ってるくらいだから良いのかな?
「内緒で持っとけばいいんじゃないか?」
『え』
良いかな?それ……