【MARVEL】This is my selfishness
第12章 10th
話そうとして、自分の喉が詰まっていることに気づく。
掠れた声しか出ない。
わたしを心配そうに見るバッキーの顔を見ていると、ボロボロと涙が零れ始めた。
『ッ、ごめ、なんでもな』
「なんでもないわけないだろ。何があった?」
ボロボロと零れ続ける涙を厭わず、彼は両手でわたしの顔を包むようにしてくれる。
彼は、だって彼は、こんなにも優しい。
それなのに。
それなのに人を殺す道具にされ、時間を奪われ、人生を奪われたのだ。
こんなにも優しい人の意思を無視して人を殺させ、人生を奪うなんて。
わたしはそんな惨いことをニュースで流れていなかった、流れていても観ていないから知らなかった、で済ませていたのだ。
なんて無責任な話だ。
世の中にこんな酷い話があるのを知らんぷりしていたなんて。
『ッヒぅ、ふゥ゙、ば、バッキーは、いま、しあわせ?』
「??…君のおかげで過去一番幸せだな」
そう言うと、バッキーはわたしの額に自分の額をコツン、と合わせた。
「君がいま、笑顔を見せてくれたらもっと幸せになれるんだが」
目を合わせながら微笑みかけられて、つられたようにわたしの口角が上がった。
『そっか』
「それで?何があったんだ」
バッキーの部屋のソファーに座らされると、その横に座ったバッキーがわたしの足を自分の足に重ねさせて、わたしの足に彼の左手が乗った。密着度がすごい。
『……でもバッキーは嫌な話かも…』
1度零れ始めてしまった涙は留まることを知らず、なかなか泣き止まないわたしを彼は自分の部屋へ招き、落ち着いて話ができるまで、とソファーに座らせたのだった。
「嫌かどうかは聞いてから決める」
『…それじゃあ遅くない?』
「いいから。ゆっくりでいい。ゴチャゴチャでもいい。話してくれ」
スリ、とわたしの肩に回った彼の右手が話を促すようにわたしの頬を撫でる。
口にするのは憚られるけど、彼の前で泣いてしまったわたしが悪いのだろう。離してもらえる気がしない。