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【MARVEL】This is my selfishness

第12章 10th



何から話そう。
ゴチャゴチャでいいと言われても、何から始めたら、なんて言ったら彼を傷つけずに済むんだろうか。
受け入れれていないと言っておきながら、博物館で写真の展示とかまで見たことでわたしの中でバッキーは史実上の人物であること、ウィンターソルジャーであることが決定してしまっている。

ドッペルゲンガー、なんて話じゃないと決定してしまっている。


深く息を吸って息を吐くように。


『バッキーが、ウィンターソルジャーだって、言われて…』

わたしの足に乗っていた彼の義手である左手ががピクリと動いた。


「誰に言われた?」

その声が酷く慎重でいつもより低く感じた。
あまりにも真剣な瞳に喋るのを躊躇う。絞り出すようにアレックスの名を出すと感情を読み取れない声音でただ静かに「そうか」と言う。


『ウィンターソルジャーとしてしてきたことだとか、けれど今はもうヒドラの洗脳は解けてるから大丈夫だとか、』

『アレックスは人がキャプテン・アメリカに憧れるようにウィンターソルジャーが好きなんだって…』


話せば話すほど、バッキーの顔が暗くなって、感情がどこにあるのか分からなくなっていく。


『博物館にも行って、ウィンターソルジャーになる前の、軍人としてキャプテン・アメリカたちと戦っていた頃のバッキーも見てきたの…』


思えば恥ずかしい話だった。
両親が生きていた頃、学校の授業の一環であの博物館に行ったことがあった。
わたしはあの展示を過去にも見ていたにも関わらず、バッキーと出会って思い出すことは無かった。
ちゃんと展示を見ていれば、歴史を、史実を学んでいれば気付いたはずだ。


わたしはなんて愛国心がないのだろう。

それに比べてバッキーは。
ウィンターソルジャーになる前の彼は愛国心の塊だったのではなかろうか。
時代が、ということもあったかもしれないけれど、命をかけて戦う軍人になるなんて、生半可な気持ちじゃ出来ないだろう。
国や友のために命を懸けて戦っていたこの人の隣に立つ資格は、愛国心のないわたしにはない。



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