【MARVEL】This is my selfishness
第12章 10th
「前々からもしかしてって思ってたんだけど、この前さ、店でお客さんがミアに絡んだ時にバッキー・バーンズさんが助けたでしょ?あの時にやっぱり!って思ったら、喋りたい欲が我慢できなくなって!」
わたしが話に追いつけないまま、アレックスは「スミソニアン博物館行こうよ!あそこにバッキー・バーンズさんの写真もあるから!」と席を立った。
引き摺られるようにして着いた博物館の中に入ると、目的の場所はもう完璧に覚えているのか、彼はズンズンとわたしを引っ張るようにして歩いていく。
「ほら、ここ!」
アレックスが指を差したそこには、写真と〈バッキー・バーンズ 1917-1944〉という表記があった。
写真のバッキーは今より若く見える…が、今のバッキーの見た目を考えると〈冷凍されていた〉という事実に現実味が帯びてくる。
…そういえば、初めて家に招待した時、年齢を聞いたら「106歳だ」と言っていた。
わたしはそんな冗談を言うタイプなんだ、と思っていたけれど、あれは冗談なんかじゃなかった。
没年まで書かれたその展示から目を離すと、今度はキャプテン・アメリカのコスチュームとその後ろにはキャプテン・アメリカと、そして共に戦った仲間たちと思われる人物の写実的な絵が掲げられた展示をアレックスに紹介される。
「キャプテン・アメリカもやっぱりすごいしかっこいいけど、僕はウィンターソルジャーの方が────」
展示に目を奪われるようにしながら、熱く語るアレックス。
もう、つらい。
受け止めれないままに入ってくる言葉の数々。
それは情熱のように、憧れのように発せられているのに、わたしの心にはそう感じれない。
『ごめん、わたし、、帰るね』
「えっ?」
いまだに掴まれていた腕を振りほどくようにして、呆気にとられてるであろうアレックスの顔も見ずに博物館の出入口へ早足で急ぐ。
後ろも振り返らずに外へ出る。
幸い、アレックスは追いかけてきていないようだ。
今のわたしは彼とは話せない。
込み上げる吐き気を堪えながら、人にぶつからないように避けながら家へと向かう。
その足は歩きから段々と駆け足になっていく。