【MARVEL】This is my selfishness
第12章 10th
ジェームズ・ブキャナン・バーンズ…?
わたしはバッキーの名前は、バッキー・バーンズしか知らない。
聞き覚えもないし、バッキーとわたしよりも前から知り合いっぽいサムさんがそう呼んでいたこともない。
『えっと…わかんない…』
そう答えるとアレックスは「そっか!でもそうだと思うんだよね!実は初めて会った時からそうじゃないかと思ってて」と言いながら、カバンからタブレットを取り出す。
「見て。この写真!」
こちらに向いたタブレットの画面には、長髪で鼻の辺りまでマスクのようなものをつけて、鋭い眼光をした人物の写真が映し出されていた。
その瞳の形や色はとてもバッキーに似ていた。同じ人物ではないかと思うほどに。
「バッキー・バーンズさんはウィンターソルジャーだよ!」
アレックスの顔を見ると、目をキラキラと輝かせ、憧れを語るように嬉しそう。
『…この人、ってこと?』
ウィンターソルジャーと言われてもどういう意味か分からないけれど、今この状況でこのタブレットの写真を見せながら言うということはつまりそういう事なんだろうと推察する。
「そう!ウィンターソルジャーって知ってる?」
その言葉に『知らない』と答えると、彼は饒舌に話し出す。
要約すると、ウィンターソルジャーというのはヒドラが生み出した超人兵士らしい。
さすがにヒドラは知っている。ヒドラとシールドが敵対していて度々衝突が起きていたことはニュースで流れていたから多少は知っている。
しかしその中にウィンターソルジャーという名前までは聞き覚えがなかった。
この国のアイコン的存在であった、キャプテン・アメリカと同じように強化された兵士だということ。
そしてキャプテン・アメリカとは違ってヒドラで管理されていたウィンターソルジャーは普段は冷凍されていて、戦いの時だけ解凍され、記憶まで奪われ、洗脳されていたということ。
興奮冷めやらぬまま、普段の仕事の時とは違うテンションの高さでアレックスはわたしに説明し続ける。
しかしわたしの頭には入ってこない。
いや、入ってきてはいるのだけれど、うまく受け止めれない。
バッキーが、ウィンターソルジャー…。