【MARVEL】This is my selfishness
第10章 9th
開店準備が終わり、あとはお店を開けるだけ、というところでロンさんが従業員を集めた。
「みんなに紹介しておくわね。今度から不定期だけど警備員さんにいてもらうことにしたわ。もし何か困ったお客さんだとか、不審者がいたらこの人に言ってちょうだい」
そう言って紹介するロンさんの隣にいたのはバッキーだった。
な、何も聞いてないんだけど……。
紹介されたバッキーは仏頂面で厳しい顔をしながら名乗った。
警備員顔?してるのかな。
目が合った、と思ったらクイ、と口角が上がり笑みを浮かべたように見えてつられ笑いをしてしまった。
……わたしが目が合ったと思っただけで本当は違う人に笑いかけたんだとしたらとんだ恥ずかしいやつだ、わたしは。
バッキーの紹介後にお店の扉の鍵を開ける頃には従業員はそれぞれの持ち場へと戻って行く。
バッキーの持ち場はどこになるんだろう。
警備員さんがいた事がないからどこで待機するのか分からない。
ぼんやりと考えながら振り返るとカウンター席の端にバッキーが座っていた。
『え、そこなの?』
「ん?」
思わず口に出てしまった。
なんならお酒まで出ている。
『警備員さんってどこで待機するんだろうって思ってたら…』
「ロンバルドが見張れるならどこでもいいって言うからな。どうせなら君の働きぶりを見ておこうと思って」
ニヤ、と軽く笑いながらグラスに口をつける。
それだけで様になってると思ってしまうのはわたしがバッキーのことを好きだから?
今までもかっこいいって思ってたけど、自分の気持ちに気づくと何もかもが『好きだから』に変換される気がしてくる。
意識してしまうと顔が熱くなるから気をつけなきゃ…。
『…出来ることなら、わたしは不審者じゃないからそこまで見張らないで頂けると……』
「いまは挙動不審だぞ」
くはは、と喉を鳴らすように笑いを堪えるときのその笑い皺。きゅう〜と胸が締め付けられる。
「定期的に裏口とかも見て回るさ。基本ここで客みたいに座ってるからいつでも声をかけてくれ」
『うん…というかわたし知らなかったよ。バッキーがここで警備員さんするの』
「さっき決まったからな」
『そうなの?』
「ああ。不定期でいいってことだったからな。サムとの任務は俺がしたくてしてる訳じゃない。まあ、就職先が近場で見つかってラッキーだ」
