【MARVEL】This is my selfishness
第10章 9th
わたしは普段から仕事の時に持って行くバッグとお酒のケース、そしてそのケースにハンドバッグを入れただけだ。
服と靴はまとめてバッキーが持っている。
「ミアには重いだろ」
『え、そんなことないと思う…』
BARまで歩きながらそんなことを話す。
わたしはよほどバッキーに弱いと思われているようだ。
割と力持ちなんだけどな。さすがにベッドや冷蔵庫を1人で持ち上げてしまうバッキーには敵わないけど。
BARに着いて裏口から入り、先にバッグだけロッカーに置いてロンさんがいるであろうカウンターの方へ向かう。
『おはようございます』
「おはよ〜ミアちゃん!やっぱり休まないわよね、あなたって子は」
『来るって言ったじゃないですか』
「そうよね。その見かけによらずちょっと頑固な所、私は好きよ」
あなたもそうよね、と何故かロンさんはバッキーに同意を求めるとバッキーは「そうだな」と頷いた。
たったそれだけなのに急に店内が暑くなったように感じる。
好きっていう単語にバッキーが同意しただけでわたしは恥ずかしくも喜んでしまっている。
わたしは自分のことをそんなに賢くないと自負している。それでも分かってしまう。
多分、いや、絶対。
わたしはバッキーのことが好きだ。
今までなんとなく気付かないように、見ないように、認めないようにしていたこの感情。
バッキーに出会うまでは感じたこともない気持ち。
認めてしまったら何かが変わってしまう気がして、多分わたしは蓋をしていた。
こんな何でもないようなことで自覚してしまうなんて。
「ミアちゃん?」
どこかボーッとしているようなミアにロンバルドが呼びかける。
呼び掛けだけではこちらに気付かないミアの顔の前でロンバルドが指をスナップさせ鳴らすとようやくハッとしたようにミアの目が俺たちを見た。
『えっあ、はいッ?』
「大丈夫?やっぱり休む?」
『いやっ、大丈夫です!ごめんなさい、ちょっとボーッとしてましたね…!』
「休みたくなったら言ってね。今日はお客さんも少ないだろうし」
『はい』